エースと仲間たちのホーム・アウェー・フロム・ホーム Home away from home――フミ斎藤のプロレス読本#042【全日本ガイジン編エピソード11】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
アメリカの古いことわざに“ホームとは帽子をかけるところ Home is where you hang your hat”というのがある。
1日の仕事を終えて帰ってくるところ。帽子をかけて、よそいきの服を脱ぎ、リラックスするところ。疲れをいやしてくれる時間timeと場所spaceがホームhomeなんですよ、ということのたとえに使われる。
“アットホーム at home”には、それだけで“くつろぐ”といったニュアンスが含まれている。ロング・ツアーをつづけるプロレスラーたちは、その日その日のねぐらをホームととらえ、心と体を休ませる。
ジョニー・エースは、バランスのいい二重生活者である。日本にいるあいだのスケジュールとアメリカに帰っているときの暮らしをはっきりと区別している。
日本ではジョニー・エースでいいけれど、アメリカではジョン・ローリナイティスのほうがいい。エースは生まれつきのルックスのよさに驚くほど無頓着である。
このあいだのシリーズ・オフには、フロリダ州タンパの自宅に戻るまえにミネソタに住んでいるアニマル・ウォリアーを訪ねた。エースがそれなりに出世して、アニマルのほうがもう3年も休業したままだから、日本のプロレスファンはふたりがじつの兄弟だということさえ忘れかけている。
レスラーとしては大先輩にあたるアニマルはいまでも弟のことをド新人だと思っているようだが、エースは兄のいうことだったら、たとえそれがピントのはずれたアドバイスだったとしても、ちゃんと耳を傾けることにしている。
兄弟仲はいいほうなのだろう。アニマル兄さんは、乗らなくなった赤のコルベットを弟ジョンに安く売りつけた。
物質主義の象徴みたいな派手なツー・シーターのスポーツ車をあてがわれたエースは、けっきょくまる2日かけてミネアポリスからタンパまでドライブして帰るはめになった。途中でアトランタに寄ってアブドーラ・ザ・ブッチャーの家を訪ねたり、仲のいいトム・ジンクと待ち合わせをしたりした。
エースには3人の親友がいる。何年かまえにダイナミック・ドゥーズというタッグチームを組んでいた相棒で、いまは中学校の先生をしながらパートタイムでリングに上がっているシェーン・ダグラス、文句ばっかりタレながらWCWに残っているブライアン・ピルマン、それからジンクの3人だ。
仲よしグループが集う場所はアリーナのバックステージではなくて、たいていの場合、エースの自宅のリビングルームだ。
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