「わかんねーところがいいんじゃネーか」藤原組長がニヤリ――フミ斎藤のプロレス読本#056【カール・ゴッチ編エピソード4】
新日本プロレスで青柳政司と異種格闘技戦でぶつかったときの藤原組長は、素足のままリングに上がってきた。ちゃんと説明してくれれば、だれもが納得できるような味わい深い理由があるにちがいないのに、やっぱり藤原組長はニヤリと笑ってはぐらかす。
「だーから、べらべらべらべらしゃべっちゃいけネーんだ」
100人が試合を観たら、100通りの感じ方があっていい。プロレスの見方なんて無限にあっていい。だから「こっちがしゃべんなきゃ、向こうは勝手に考えるだろ、いろいろと」。
藤原組長としては、これでももうすでにしゃべり過ぎなのだろう。プロレスラーのプロレス観というものは、提示するものであって、話して聞かせるものではない。藤原組長はそう考える。
「だーから、前田はそこ、そこなんだよ。前田は、これはこれこれこうでこうだから、こうなんですよー、とコトバで説明しなきゃ気がすまネー性格だろ。わかんネーほうがいいんだよ、レスリングってのは」
藤原組長の前田日明観が聴けたのは大きな収穫だった。藤原組長も前田も新日本プロレスでプロレスラーとしてデビューし、アントニオ猪木からプロレスを学び、ゴッチ先生からレスリングを教わった。藤原組長はUWFを経て藤原組をつくり、前田はUWFを経てリングスにたどり着いた。
藤原組長は藤原組長の理解の仕方で前田を理解し、前田に愛情を持っている。
藤原組長は“まあ、それもしようがネーかな”と感じると、最後は決まって「ん、未熟モンが」とつぶやくのである。(つづく)
※文中敬称略
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ1
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