地方都市のホストはかくも悲惨だった…逃走中の元ホストが語るリアルな裏話
荒巻さんは苦笑いを浮かべながら続ける。
「太客が付かなかった私は、メリットの少ない“枝客”や“痛客”の相手ばかりでした。痛客は一時的には大金を使ってくれるので、初めはいいカモなのですが、後々足手まといになる。必要以上に自分を大きく見せようとしたり見栄を張ったりする女は、カネは使いますがホストに利益はもたらさない。そういう女はゾッコンになっているホストの前で彼女ヅラをするんで厄介なんですよ。さらに、ほかのホストの接客はなっていない、顔がイマイチだとか悪口ばかり。ときにはヒステリックなんか起こしたりして。そんな客といつまでもくっついていたらほかのホストとの関係も悪くなるし、客も寄り付かなくなる。そういえば最近、最後はAVまで落ちたタレントがいましたよね。あれが痛客の典型例です。松居一代なんかも、いまホストに行ったらドハマりするんじゃないですか」
太客だと思っていた女性が痛客だったということもあるのだから、ホストたちも客選びにはシビアになっているそうだ。痛客はやはり、売れていないホストに回される。
「じつはVIPルームに行くような女こそ痛客が多いです。少しホスト業界の話とは逸れますが、10代の頃、六本木のクラブでボーイをしていました。そこでもVIPルームに行きたがるような女はバカなやつが多かった」
果たして、その理由とは……。
「急に態度がでかくなるんですよね。その女がグラスを床に落として割ったんですけど、僕を呼びつけて『ケガしちゃうから早く片付けてくんない?』と脚を組みながら命令してきたんです。普通にカチンときますよね。一方で、VIPルームにいる男性はカネも社会的地位もあるので、人間としてちゃんとしている印象だった。ちょうど、そのときVIPルームにいたのが、読売ジャイアンツの某ドラフト1位野手。野球選手って指先が命じゃないですか。でも『俺が片付けるから仕事に戻っていいよ』と破片を拾ってくれました。ああ、もっとちゃんとした女を付けてやるべきだったと反省しましたよ」
荒巻さんは、「ぶっちゃけホスト時代は地獄そのものだった」と語る。上下関係に厳しく、“体育会系の極み”といっても過言ではなかったそうだ。
「閉店後のミーティングはいつも憂鬱な気分でした。年下の先輩に『ちょっと、昨日の伝票持ってこい』と言われ、席を外せば『どこ行ってたんだよ、クソ野郎!』と全員の前でケツを蹴られることもありました」
とはいえ、嫌な思いばかりでもなかったという。
「唯一、働いて良かった点は、“打てる(ヤレる)”女が何人かできたことですかね。確実に打てる出会い系サイトもホストになることで見つけました。ホストを辞めた今でも肉体関係が続いている客もいますよ」
今回の裏話。ホスト業界ではよくあることだと言われればそうかもしれないが、それでも実際に目の前の男性が吐き出す言葉には重みがあった。現在は逃亡中だというが、今後また会うことはできるのだろうか……。
荒巻さんは「次に会うときは、多分この街には住んでいないでしょうね」と再び帽子を深くかぶると、細い路地を走り去っていった。
【ホスト業界の豆知識】
爆弾:ホスト業界で絶対に犯してはならないタブー
痛客:暴力・暴言など店にとって不利益な客。
枝客:常連客が連れてきたフリーの客。お金はほとんど使わない。
メール営業:自分の客にはLineで「元気にしてる? 今日飲みにおいでよ」などとこまめに営業をかける。痛客にメール営業をすると、「金ないの? ダッサー」とバカにされるらしい。また、新規客の獲得は出会い系サイトで引っ掛けることが多いそうだ。
打つ:ホストと客が肉体関係を結ぶこと
<取材・文/國友公司>元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
ホスト時代は地獄そのものだったが…
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