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『フリースタイルダンジョン』完全制覇の晋平太が激闘を振り返る「オファーがあったときは『自信ないな』みたいな感じでした」

 MCバトルの人気をお茶の間にまで広げたテレビ番組『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)。2015年の放送開始以降、MCバトルの猛者たちが挑戦者として出演してきたが、モンスター全員を倒したラッパーは1人もいなかった。  その歴史を塗り替えたのが、晋平太。ULTIMATE MC BATTLE(UMB)を連覇した経験を持つ男が、またもやMCバトル史に名を残す快挙を成し遂げた。今回は、現場で収録を観戦した記者が、優勝後の晋平太へのインタビューを敢行。モンスターたちとのバトルを振り返ってもらった。

優勝後の晋平太へのインタビューを敢行

「技術で勝っても、ハートが乗らないと負ける」

 もともと、審査員として『フリースタイルダンジョン』に出演していた晋平太。「チャレンジャーになりたい」と宣言して同番組を卒業後、挑戦者としての出演を「いつかこい!」と待ちわびていたが、実はいざオファーがあった瞬間は「今なのか……」と焦りを感じたという。 「今年は『もう1回フリースタイルバトルに取り組む』と公言して、実際バトルにも出たんですけど、全然勝てなくて。魂が乗ってこないというか、勘が戻らない部分があったんです。だから、オファーがあったときも『今は自信ないな』みたいな感じでした」  出演依頼から本番までの期間は約1か月。モンスターと戦う順番は、本番までわからない。対策をするにも時間がなかった。 「本番までにできることは、自分の内面を見つめ直して軸をブレないようにすること。そして自信を持つことだけでした。勝てなかったころは、ギリギリのところで踏ん張りがきかなかった。フリースタイルバトルって、技術で勝っていても、ハートが乗っていなかったら負けてしまう競技なんです」  そして迎えた本番。初戦の相手はサイプレス上野。サ上は純白のスーツに身を包み、手には菊の花と、エンターテイメント精神全開の出で立ちで登場した。晋平太は先行を取ると韻を踏みながら、受け取った菊の花を全力で蹴り飛ばす。文字通り、相手の挑発を足蹴にする反撃に、会場は大いに湧いた。 「菊の花を持ってこられて、『そっちが仕掛けてくるなら、こっちもあるものを全部使ってやろう』って感じでしたね。花を蹴り飛ばしたところでフリースタイルのスイッチが入ったし、『ツカミはOK』という手応えもありました。ただ、もう花束は一生蹴らないです! あの放送以来、よく花束を持ってきて『蹴ってください!!』って言われるんですよ。バトルだから盛り上がりましたけど、人からもらった花束を蹴るって、ただのカスですから(笑)」

戦って感じたMC漢の“大きさ”

 2戦目の相手は漢 a.k.a. GAMI。2人の間に対立構造があることは日本語ラップ好きの間では有名な話。  なお2人は、今年3月に代々木公園で行われた「渋谷サイファー祭り」でMCバトルもしていたが、その日は8小節2ターンのやりとりのみで終了していた。そのため、この収録で漢の名前がコールされた時点で会場は大歓声に包まれた。 「漢くんとは対立する構図になっていましたけど、個人的に嫌いとか、憎いということは一切ありませんでした。むしろ僕は昔から漢くんのファンだったし、ラッパーとしてもリスペクトしている。そのことを大前提に、言うべきこと、言いたいことを正直に出そうと思っていました」  バトルは序盤から漢が激しいディスを展開し、晋平太がそれを受けながら反論する展開に。2人の主張はなかなか噛み合わなかったが、徐々に互いをリスペクトする言葉が見えはじめ、最後は握手。その後、客席から起こった歓声と拍手は、バトルを通して和解に至った2人への感動から生まれたものだった。 「戦ってあらためて『本当にでっかい人だな』と思いましたね。試合の勝ち負けについては、特に手応えもなかったです。あの漢くんとのバトルは、勝敗の問題ではなかった気がします」  大きな感動を生んだこのバトルでも、晋平太は僅差で勝利。それは、「ほかのモンスターとの戦いも見たい」「ここでチャレンジを終わらせたくない」という空気が会場に生まれていたからだろう。実際、晋平太を応援する声は、ステージが進むごとに増えていった印象だ。
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