ザ・グラジエーターのスウィート・ハート物語――フミ斎藤のプロレス読本#091【Tokyoガイジン編エピソード01】
マイクは、いちどだけデリーサさんを日本に連れてきた。彼女に自分の仕事、自分が働いている環境をみせておきたかったのだろう。
仲よしのふたりだから、観光の計画も立てておいた。シリーズ興行が終ったあと、1週間だけ東京に残って、六本木を歩いたり、東京タワーの展望台にのぼったりした。
東京ディズニーランドに行こうとしたときは、京葉線の乗り方がどうしてもわからなくて、東京駅の地下で迷子になった。でも、それはそれでちゃんと楽しかった。
たぶん、デリーサさんはいつまでもこのままでいられたら、と考えている。マイクも、FMWで活動しているうちはいまのままでハッピーなのだろう。
しかし、ザ・グラジエーターはたぐいまれな才能を持ったプロレスラーである。本人がそれを望もうと望むまいと、何年か先にはまったく別の世界がグラジエーターのまえに広がっているかもしれない。
プロレスラーは基本的には商品だ。マイクの意思とは関係なくグラジエーターが独り歩きをはじめることがあるかもしれないし、マイク自身がグラジエーターではないサムシングに変身することだってあるかもしれない。なにが起こるかわからない。
でも、変わらないほうがいいこともやっぱりある。
マイクとデリーサさんにはいつまでもいつまでも手をつないで歩いてほしいし、雨上がりの日曜の午後なんかに公演をお散歩したりしてほしい。だって、ふたりはスウィート・ハートなんだから(つづく)。
※文中敬称略
※この連載は月~金で毎日更新されます
文/斎藤文彦
1
2
⇒連載第1話はコチラ
※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス読本」と書いたうえで、お送りください。
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ