更新日:2022年10月05日 23:51
スポーツ

ザ・グラジエーターのスウィート・ハート物語――フミ斎藤のプロレス読本#091【Tokyoガイジン編エピソード01】

 マイクは、いちどだけデリーサさんを日本に連れてきた。彼女に自分の仕事、自分が働いている環境をみせておきたかったのだろう。  仲よしのふたりだから、観光の計画も立てておいた。シリーズ興行が終ったあと、1週間だけ東京に残って、六本木を歩いたり、東京タワーの展望台にのぼったりした。  東京ディズニーランドに行こうとしたときは、京葉線の乗り方がどうしてもわからなくて、東京駅の地下で迷子になった。でも、それはそれでちゃんと楽しかった。  たぶん、デリーサさんはいつまでもこのままでいられたら、と考えている。マイクも、FMWで活動しているうちはいまのままでハッピーなのだろう。  しかし、ザ・グラジエーターはたぐいまれな才能を持ったプロレスラーである。本人がそれを望もうと望むまいと、何年か先にはまったく別の世界がグラジエーターのまえに広がっているかもしれない。  プロレスラーは基本的には商品だ。マイクの意思とは関係なくグラジエーターが独り歩きをはじめることがあるかもしれないし、マイク自身がグラジエーターではないサムシングに変身することだってあるかもしれない。なにが起こるかわからない。  でも、変わらないほうがいいこともやっぱりある。  マイクとデリーサさんにはいつまでもいつまでも手をつないで歩いてほしいし、雨上がりの日曜の午後なんかに公演をお散歩したりしてほしい。だって、ふたりはスウィート・ハートなんだから(つづく)。 ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦
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