更新日:2022年11月20日 10:01
エンタメ

M-1新システムの影響は? ユウキロックが「M-1が変わる」と危惧する意外な理由

 たとえば、順番が決まっていれば前後に出るコンビのことを考えて、ファーストラウンドと最終決戦でやるネタを完全に決めておけるということもある。これも問題ない。かつて俺は別の賞レースのトーナメント大会に出場したときに、1回戦と準決勝ともに先攻のコンビのネタを見て、直前でネタを変えた。それが功を奏し、決勝まで進出したことがある。1年間かけて完成させて、稽古しまくった2本のネタを前のコンビの出来を見て、「次に出ることなったらAで」ということは簡単である。事前に先に出るコンビによってネタを決めておくこともできるだろう。そんなことができないコンビが決勝に上がれるわけがない。では、何が問題なのか? それは「順番が決まった瞬間」である。  敗者復活組が最後に出てきて有利だから「全組を平等にする」という観点から番組冒頭に敗者復活組を発表する。それだけならば、そこで全組のネタ順をくじで決めればいい。しかし、それならば「テレビ番組として起伏をつける」という部分が損なわれ「ドラマチックさも残す」ことができない。だから「笑神籤(えみくじ)」なのである。ということは、司会の今田さんが「笑神籤(えみくじ)」を引くときに、みんなはそれを見ている、カメラで抜いている可能性が高い。たとえばである…… 今田「(くじを引く)」 決勝進出者「(別場所で固唾を飲んで見ている)」 今田「トップバッターは……和牛」 和牛「(リアクション)」  この瞬間、「和牛」はどんなリアクションをすればいいのか? みんな芸人だから、必ずリアクションはするはずだ。不利と言われるトップバッターに選ばれたコンビは「うわー、最悪やー」と言ってからスタジオに向かい、ネタをするのか?  今まで外的要素はなく、漫才をするまで姿を現さなかった決勝進出者。ずっとネタだけを見て判断されていたが、今回のシステムだと、漫才以外の要素を審査員、観客に晒すことになる。あまりにも「バラエティ」チックな、「ゲーム要素」の高い「M-1グランプリ」なるだろうか? 断言する。これは今までの「M-1グランプリ」ではない。あくまでも俺の想像なので、放送を見てみたらくじを引いて順番が決まるだけなのかもしれない。俺の不安が杞憂に過ぎなかったことを祈るばかりだ。  厳しいことを書いたが、「M-1グランプリ」を愛するがゆえ、全芸人を尊敬するがゆえであることなのでお許し願いたい。しかし、最後に待ち受ける最終決戦は変わることのない真っ向勝負である。3組ともが最高の漫才を披露した、昨年のような激闘を期待したい。激闘は色褪せることがない。思い出すなー、初代チャンピオンを争った中川家との激闘。思い出せない方は著書『芸人迷子』で書き綴っております。皆さん!! AmazonへGOだ!! 以上、ユウキロックでした。センキュー!!

撮影/林紘輝

【ユウキロック】 1972年、大阪府生まれ。1992年、11期生としてNSC大阪校に入校。主な同期に「中川家」、ケンドーコバヤシ、たむらけんじ、陣内智則らがいる。NSC在学中にケンドーコバヤシと「松口VS小林」を結成。1995年に解散後、大上邦博と「ハリガネロック」を結成、「ABCお笑い新人グランプリ」など賞レースを席巻。その後も「第1回M-1グランプリ」準優勝、「第4回爆笑オンエアバトル チャンピオン大会」優勝などの実績を重ねるが、2014年にコンビを解散。自身の「M-1」挑戦からその後のコンビ解散までを綴った自叙伝『芸人迷子』が、お笑い業界内外で大きな話題を呼んだ
1972年、大阪府生まれ。1992年、11期生としてNSC大阪校に入校。主な同期に「中川家」、ケンドーコバヤシ、たむらけんじ、陣内智則らがいる。NSC在学中にケンドーコバヤシと「松口VS小林」を結成。1995年に解散後、大上邦博と「ハリガネロック」を結成、「ABCお笑い新人グランプリ」など賞レースを席巻。その後も「第1回M-1グランプリ」準優勝、「第4回爆笑オンエアバトル チャンピオン大会」優勝などの実績を重ねるが、2014年にコンビを解散。著書『芸人迷子

芸人迷子

島田紳助、松本人志、千原ジュニア、中川家、ケンドーコバヤシ、ブラックマヨネーズ……笑いの傑物たちとの日々の中で出会った「面白さ」と「悲しさ」を綴った入魂の迷走録。

⇒試し読みも出来る! ユウキロック著『芸人迷子』特設サイト(http://www.fusosha.co.jp/special/geininmaigo/)
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芸人迷子

島田紳助、松本人志、千原ジュニア、中川家、ケンドーコバヤシ、ブラックマヨネーズ……笑いの傑物たちとの日々の中で出会った「面白さ」と「悲しさ」を綴った入魂の迷走録。

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