更新日:2022年11月20日 10:35
スポーツ

スタン・ハンセンのおヒゲと『世界最強タッグ』とメリークリスマス――フミ斎藤のプロレス読本#152[馬場さんワールド編7]

「ことしこそは、ことしこそはと思ったけど、ことしもまた終わっちゃったね。おい、フチ、逃げてばっかりいないで、幸せは自分でつかみなさい」  ラッシャー木村は、定番のマイク・パフォーマンスで独身会会長の渕正信にやさしく語りかけた。まんなかへんの6人タッグマッチが終わると、ジャイアント馬場さんは日本テレビの『全日本プロレス中継』の放送席に座る。  和田京平レフェリーが軽快な足どりでリング内に入ると、アリーナ席のすぐ上の電光掲示板に“98世界最強タッグ決定リーグ戦優勝決定戦”というオレンジ色の文字が浮かび上がった。  大きくて、強くて、ふさふさの栗色のおヒゲを生やしたハンセンは、小橋の“右のラリアット”でちょっと意外なくらいあっさりと3カウントのフォール負けを許した。  古くからの全日本プロレスのサポーター層が期待していたハンセンの“左のラリアット”は、試合終了のゴングが鳴ったあとで小橋の首をはねた。  1万6300人の右手がロングホーンをつくり“ウィーッ”の大合唱が武道館を揺らした。ハンセンはニコリともせず、ブルロープを振りまわしながら花道を去っていった。  気がつくと、電光掲示板のメッセージが“メリー・クリスマス&ア・ハッピー・ニュー・イヤー”に変わっていた。  エンディングのテーマ曲は山下達郎の『クリスマス・イブ』かと思ったら、いきなり英語の歌がはじまった。でも、よく聴いてみたら、やっぱりそれは山下達郎の声だった。  リング上ではリーグ戦出場チームが集合しての閉会式がはじまっていた。全日本プロレスの1年の暦(こよみ)がことしもまたフィナーレを迎えた。 ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦
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