打てば響く、オーッといえばオーッのツーカー馬場ワールド――フミ斎藤のプロレス読本#150[馬場さんワールド編5]
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
打てば響く、ツンといえばシャンじゃないけれど、“オーッ”とやれば“オーッ”、“ウィーッ”とくりゃ“ウィーッ”の阿吽の呼吸なのである。
そこにリングがあって、みんながよく知っているプロレスラーたちがいて、リングのまわりに大きな円を描くようにしてお行儀のいいお客さんたちがいれば、ほかにはなにもいらない。
広い広い東京ドームに舞台演出らしい舞台演出はほんとうになにもなかった。赤コーナーの選手たちは3塁側ベンチから、青コーナーの選手たちは1塁側ベンチから、それぞれの入場テーマ曲に乗って入場してきた。
バックススクリーンとリングをつなぐドーム仕様の長い花道はなし。でも、そのおかげでリングの周囲360度からまんべんなく観客の目がリングに注がれるという“プロレスの法則”は守られた。
定番の日本武道館大会の空気がいつもの3倍半くらいに膨張したようなシチュエーション、と考えればわかりやすいかもしれない。
常連層の全日本プロレスファンが友だち、家族、会社の同僚などをひとりかふたり、いっしょに連れてきた。生でプロレスを観るのは久しぶりという“潜在層”のファンが当日券を買った。東京ドームがこぢんまりと満員になった。
すっかり中年になったジャンボ鶴田が“オーッ”の10連発をやってくれた。ラッシャー木村のマイクは“ダディ”とポケモンとキティちゃんの3ネタだった。
邪道・外道はよそいきのプロレスに走りすぎて、ジョニー・スミス&ウルフ・ホークフィールドのアジア・タッグ王者チームに完敗。田上明とザ・グラジエーターのからみには5万8300人が口を開けてどーっとどよめいた。
全日本プロレスファン、というよりも馬場ファンにとって田上は特別な感情を抱けるレスラーということになるらしい。
“四天王”に共通しているスタンスが寡黙さのようなものだとしたら、田上はその寡黙さからくる、かったるさみたいなエッセンスを観客席にまき散らす役なのだろう。常連層の観客の目には、田上のこのずぼらな感じがたまらなく現実的で心地よいものに映る。
まだなんにもしていないのに、ジャイアント馬場が出てきただけでメーデーのシュプレヒコールみたいな“バーバ、バーバ”の大合唱が起きた。
新崎人生は、予告どおり馬場さんの右手首をつかまえて“念仏ロープ歩き”を成功させた。
議員レスラー、馳浩はきっちりと体づくりをして約4カ月ぶりに観客のまえで裸になった。ジャイアント・スウィングは全部で18回転。裏投げX2、ノーザンライト・スープレックスX2、フルネルソン・スープレックスの大技フルコースを用意周到にレイアウトしたが、秋山準の新型エクスプロイダーで大の字にノビた。
秋山のタイツの色はブルー。重たい試合がちょっぴり観客を疲れさせた。
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