更新日:2022年11月20日 10:35
スポーツ

“リングス・バカ一代”前田日明のジェネシスな時間――フミ斎藤のプロレス読本#153[前田日明編・前編]

 試合後、勝者・高阪は「実力の世界なんで、強い者がグループのトップを取る。もっとしっかり勝ちたかった」と語り、敗れた山本は「(高阪を)後輩という目ではみていない。ジャパンは、技術的にはみんな同じレベル。自分らはプロですから、勝負だけじゃないプラスアルファを出していかないと。格闘技の精神的な部分を」とコメントした。  前田は「ユニバーサル・プロレス時代から数えてもベスト3に入る試合。これから10数年たっても語り継がれる、心に刻み込まれるような一戦だったと思う」と前置きしてから、山本-高阪戦を「ふたりの宇宙があって、周囲(観客)がそれに同化していった不思議な試合」と分析した。  “不思議”という表現に前田自身のまだ拭いきれない観客への猜疑心のようなものが見え隠れしていた。  おそらく、前田のなかには「お客さんは(この試合を)どのくらい理解しているのだろう」との想いがあるのだろう。  リングスは、常連サポーター層がそのいちばんコアなところを支えている運動体。ほとんどの観客は、過去10数年間にわたり前田をずっと追いかけてきた熟練の“目利き”である。  前田ファンは、前田と田村の試合を目の当たりにしたとき、“前田日明”に惚れ直した。前田を信じる者たちは、前田が考えているよりもずっとディープな次元でリングスに愛情を注いている。  観客はどこまでも辛抱強く、そして貪欲に前田の“リングス・バカ一代”の大長編物語を見届けようとしているのである。 ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦
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