前田日明が探し求めた“まちがいのない物差し”――フミ斎藤のプロレス読本#154[前田日明編・中編]
“総合格闘技”に到達する以前の前田は、前田と前田の仲間たちが完成させつつあった競技を“プロフェッショナル・レスリング”と呼称した時期があった。“前田日明”がたどってきた道はいろいろな意味でつねに活字になった。
カレリンとの“100年たっても200年たっても汚されることのない闘い”を終えたばかりの前田のすぐそばには『前田日明のリングス・バカ一代』の登場人物たちが集っていた。
古田信幸リング・アナウンサーの声はあいかわらずバカでかいけれど、そこにいる物理的な古田さんはちょっとだけ中年のルックスになっていた。メディカル・アドバイザーの野呂田秀夫先生がいて、リング・ドクターの安藤義治先生がいる。
報道陣に囲まれた前田は、汗だくになって“前田日明”を語った。
映像作品として『ニュースステーション』に登場した前田の肩書は、やっぱり“プロレスラー”ではなくて“格闘家”になっていた。試合シーンの映像といっしょに画面からこぼれてきたナレーションの導入部分は「そのルーツはプロレスだが……」だった。
久米宏キャスターはよほど用心深いのか、プロレス、格闘技に関するコメントをなかなか発してくれない。それはそれで仕方がない。
“前田日明”がずっと探し求めてきたのはまちがいのない、汚されることのない物差し(基準)。でも、そこにいる前田はいつも最後に「でしょ?」をつけてしまうのである。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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