蝶野正洋+nWo×新日本プロレス=不滅の少年漫画的感性――フミ斎藤のプロレス読本#159[新日本プロレス199X編04]
マサヒロ・チョーノのnWo入りのシーンは連続ドラマ“マンデー・ナイトロ”の電波に乗ってアメリカじゅうをかけめぐり、これもまたドラマのなかのストーリーとして、ビショフ副社長が「新日本プロレス買収」を宣言した。蝶野の存在はすでにnWoのストーリーにどっぷり漬かっている。
それが“善”であっても“悪”であっても、超一流のプロレスラーは世界を股にかけて活躍するものである。かつての『空手バカ一代』や『四角いジャングル』、あるいは『プロレススーパースター列伝』のような現実と同時進行型の実録劇画があったら、蝶野はいまごろコミック誌のヒーローになっていた。
“蝶野物語”のプロローグが1991年の“G1クライマックス”での初優勝シーンだとすると、そのとき中学1年生だった少年ファンはもう18歳になっている。蝶野は彼らの成長と同じスピードで白のニータイツから黒バージョンへの進化の過程をディスプレーしてきた。
蝶野にとって、プロレスとはだれがいちばん強いかではなくて、だれがいちばんスマートかである。だから、きのうきょうの勝った負けたで一喜一憂することはない。だれがいちばんスマートかは、だれがいちばんたくさんのドラマをプロデュースしてきたかで決まる。
プロレスラーのほんとうの価値(業績)は、ずっとずっとあとになってから再評価されるものなのだろう。
マサヒロ・チョーノは、日本とアメリカを同時進行で生きる1990年代後半のスーパースター。ひょっとしたら、nWoのドラマでさえもこれからつづいていく長編ドラマのなかのほんの一部かもしれない。
あと何年かすると、蝶野も“おじさんレスラー”の仲間入りをする。そのころになれば、蝶野のあとから出てくるだれかがまた蝶野的なキャラクターを演じているだろう。
プロレスとはきっとそういうものなのである。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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