漫画家・東村アキコ「加藤シゲアキの新作小説は世界観が抜群にセンスいい!」
さらに東村氏は、本作の中に、加藤の資質が垣間見える“ある部分”を指摘する。
「小さい頃からアイドルで、レッスンとかに通う生活をしているはずなのに、主人公の光太の家庭環境や洋服を買いに行くシーンを読むと、金銭感覚がめっちゃ普通なんですよね。7万円のスニーカーを高いと思ったり。長く芸能人をやっていると、一般人とは感覚がズレてくるものじゃないですか。だけど、作家の場合はその感覚がズレない。全体の層が見えているからこそ物が書けるというか、周りのマンガ家さんで年収が1億を超えているような人も、高い買い物をしたら『高い』という感覚があるんですね。つまりシゲは普通の感覚を持ちながらステージにも立っているってこと。それって奇蹟だし、生まれながらの作家なんだなと思います」
そんな加藤が描くホストクラブ「チュベローズ」には、個性的なホストが多数、在籍している。カリスマホストの雫もそのひとりだ。
「登場人物のなかでは雫が一番好き。映画化するんだったら、ぜひ関ジャニの誰かに演じてもらいたいです。光太にはシゲ自身の姿を重ねて読みました。光太が“自分の手で人生を選択してきたか?”と自問するシーンがありますが、シゲも小さい頃から芸能界で揉まれてきたせいか、自我があまり強くないところがある。私が男であの顔面偏差値だったら、もっと横暴に振る舞うと思うんですけどね。就活は苦手なタイプなんじゃないかな(笑)。そういうところも好きですね」
歌舞伎町が舞台の小説が好きで今までにもいろいろ読んできたんですけど、思った以上に歌舞伎町でした。重厚だし、生々しい描写もあるし。かといって、本物の歌舞伎町とはどこか違う。『チュベローズ』もいわゆる普通のホストクラブとは違いますよね。髪を立てたお兄さんがウェイウェイ言うわけではなく、『笑ゥせぇるすまん』に出てくるバー〈魔の巣〉みたいな知的な感じがするというか。実在する場所なんだけど、本物とはどこか違うという世界観のセンスがすごくいい。個人的に、いかにもなホストクラブは苦手なんですが、こういうお店だったら毎日通ってドンペリ入れたいです(笑)」<取材・文/山脇麻生 撮影/高仲建次>
加藤が作り上げた「アナザー歌舞伎町」も本作の魅力のひとつだと言う東村氏。
「1
2
『チュベローズで待ってる AGE22』 歌舞伎町の夜に交わる男と女のミステリー巨編 |
『チュベローズで待ってる AGE32』 すべてを覆す愛と衝撃のラストシーンに驚嘆 |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ