東京五輪追加種目で注目の空手。聖地で見た人気とその裏にある問題点
そして、ホールへのドアを開いたとき僕の落胆は120%の絶望に変わりました。
「ギッチギチやん……」
それは穴場とはほど遠い「大盛況」です。
1万人収容の大会場の客席は空手ファンがビッシリ埋めています。埋めているどころか、1階スタンドでは座席後方の通路や、階段にまで人があふれている状態。人数的にはプロ野球の不人気試合より多いかもしれません。
しかも、子どもがめちゃめちゃ多い。
パッと見た感じでは「戦いが好きそうな男性」が4割、「戦いが好きそうな男性が好きそうな女性」が3割、「空手を習っている子どもと付き添いの親」が3割といった印象。とりわけ子どもたちの存在感は大きく、通路を大移動しながら憧れの空手家たちに群がっています。
「先生! 頑張れ!」といった呼びかけが頻繁に聞こえることから、やはり空手教室の生徒なのでしょう。彼らが憧れているヒーローが武道館で戦っている。なるほど、そりゃ興奮もするというもの。戦隊ヒーローを見るより、道場の先生のほうが身近な存在ですし、リアルに強いでしょうからね。
組手競技というのは、いわゆるど突き合いなのですが、ちょっとしたルールもあります。まず、五輪の追加競技となった空手は大前提として「寸止め」です。建前上は殴らず、殴る寸前で止めるのです。これは極真会館などが標榜するフルコンタクト空手(ガチで殴る武術)とは区別された競技となっています。もちろん、人間のやることですので勢い余って普通にガツガツ殴ったり蹴ったりしていますが、それはあくまでも事故なのです。
そして、その寸止めのなかでも殴り方・蹴り方によってポイントが異なります。中段突き(胸とかをど突く)だと1ポイント、上段蹴り(顔を蹴る)だと3ポイントといった具合。試合では互いの攻撃を審判員が判定し、いい攻撃を繰り出せばポイントが入るという仕組みです。まぁ、ボクシングみたいなもので、コチラは見たまんまのわかりやすい種目です。僕も素人ながら、パンチやキックが当たればオオーッと燃え上がります。
一方、形競技というのはあらかじめ定められた70種類ほどの「形」から選択した形を演じ、その出来栄えを審判員が判定する競技。体操やフィギュアスケートに近い「採点種目」です。コチラは見てもまったくわかりません。まず、その形が合ってるんだか合ってないんだか、予備知識がないと判別できず、体操やフィギュアのように「コケて明らかに失敗」という場面もありません。
予想を上回る盛況ぶりで穴場感はゼロ。そして難解すぎる「形競技」は初心者にはわかりづらく疎外感満点……。モヤモヤを抱えつつ観戦を続けたフモフモ編集長が、最終的にたどりついた空手を楽しむコツとは?(次回を乞うご期待)1
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