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東京五輪は期待大。「攻め姿勢」でコロナ禍を乗り越えるハンドボール代表の活躍

~第79回~  フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営しているスポーツ好きブロガーです。2012年のロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。

急成長のハンドボールは五輪注目の競技

 長らく日本と世界のスポーツ界が動きを止めてきたなかで、いよいよ迫ってきた東京五輪・パラリンピック。理想通りには物事は進みませんが、そのたびに体操の内村航平さんが発した「できないではなくて、どうやったらできるか」「どうにかできるように、そういう方向に考えを変えてほしい」という言葉を思い出し、心の聖火を燃え上がらせる日々です。  さて、今回はこのように苦しい一年にも時計を止めず、前に進んできた競技の「今」を探訪してきました。その競技とはハンドボール。男子代表は1988年ソウル大会を最後に五輪から遠ざかり、女子代表も1976年モントリオール大会を唯一の出場とする五輪と縁遠い競技です。しかし、まさに彗星のように注目を集めつつある競技でもあります。  とりわけ男子代表「彗星ジャパン」は、2021年1月の世界選手権において、自国開催であった1997年大会以来のメインラウンド進出をはたし、メインラウンドのバーレーン戦においては「史上初のメインラウンドでの勝利」をも記録しました。「レミたん」の愛称で知られる土井レミイ杏利選手など個人としての知名度を高める選手も登場し、五輪への期待感も高まるばかり。  そんな注目のなかで行なわれたのが日本ハンドボールリーグのプレーオフ・ファイナルでした。この大会は、ハンドボール日本一を決める大会であると同時に、東京五輪へとつながる重要な大会でもありました。なにせ大会が行なわれるのは東京五輪と同じ国立代々木競技場第一体育館です。五輪本番の会場で開催される事実上のテスト大会。五輪へつながる盛り上がりや熱気はどうなのかを確かめる……そんな気持ちでの訪問です。

コロナ禍にもっとも苦しむ企業のひとつANAが冠スポンサーとなったプレーオフ

 会場前の広場では出場する各チームの応援団が自分たちの応援グッズを配布するなど、早くも盛り上がりを見せる現地。すでに標準的な対応となった手指消毒、マスク着用、ソーシャルディスタンス、検温といったものをこなして会場入りします。入場チケットは自らもぎるなど、一年前なら考えもしなかったことにもすっかり慣れました。係員も、観客も、すでに「コロナ禍での試合観戦」になじんだようです。  会場内の導線や行動に制限はあるものの、過剰な警戒態勢ということもなく「ハレの日」にふさわしい祝祭感というものも存分に堪能できます。アリーナ席への入場者にはシャツやタオル、焼き菓子などのグッズ配布もあり、テンションも上がります。美味しそうな焼き菓子を配布されると「会場内で食べてもよろしいんでしょうか!?」とドキドキしてしまうのもコロナ禍ならではです。

焼き菓子、コーヒー、タオル、シャツなど山盛りのグッズをいただきました

臨機応変なコロナ対策でいち早く有観客試合を実現

 基本的な対策は徹底しつつも過剰ではない「ほどよい」運営態勢。観客のほうも「ほどよい」にぎわいでこの日を楽しんでいます。スタンドには出場チームの母体企業からの応援団と思しき大集団が居並び、太鼓やコールでチームを盛り上げています。スタンドも全面を使用しているわけではなく、席も1席空きの市松模様ですが熱気は十分。アリーナ席には大型のレンズを構えた熱心な女性ファンも数多く見られます。コロナ禍だからといって熱気が失われたりはしていない模様。  そうした「ほどよさ」というのは当然のことで、実はこのハンドボールというのはコロナ禍においても歩みを止めず、「できることをできる範囲で」つづけてきた競技です。2021年1月に各国から代表チームを集めて世界選手権を開催しているということもそうですし、日本においてもハンドボールはコロナ禍に負けずリーグ戦を継続してきました。  プロ野球やJリーグのような屋外競技のプロリーグでも有観客試合に踏み切ったのは2020年7月10日からというなかで、日本ハンドボールリーグは2020年8月30日から関係者・家族ではない「観客」を入れた有観客試合を一部会場で開催しています。バスケットボール・Bリーグが有観客試合開催を発表したのが2020年8月25日(開幕10月2日)、バレーボール・Vリーグが有観客での開幕を迎えたのが10月17日というのを鑑みると非常に「攻めた」決断と言えるでしょう。
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日本ではマイナースポーツも…
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