更新日:2022年11月29日 12:08
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仮想通貨で儲かった投資家、あの手この手で節税対策も税務署にはバレバレ

課税

【仮想通貨の課税はこうなった!】※国税庁発表の資料より作成。経費に関しては複数の税理士への取材を基に作成

2500万円の経費は認められる?

 一方、昨年初めから「草コイン」と呼ばれるマイナー通貨への投資を続け、年末までに約5000万円分を現金化したというN氏(40歳)は、ペーパーカンパニーを使った節税対策を実践したという。 「知人が所有する国内のペーパーカンパニーに取引を“指南”してもらったことにして、コンサルフィーとして2500万円を振り込みました。これはペーパーカンパニー側は課税されますが、中小企業の法人税は実効税率最大約34%で個人の所得税よりも安い。一方、私個人の利益は2500万円に圧縮されるので、税率が下がるというわけです」  この方法はどうなのか。前出の寺田氏は「あらかじめ個人事業主として開業届を出していれば数パーセント程度の経費は認められる可能性もありますが、50%ものコンサルフィーを税務署が経費として認めるとは思えない」と一蹴する。  ビットコイン長者の間では、さらに単純な現金化スキームも「有効」だと信じられているようだ。ビットコイン投資で儲け、800万円を現金化したというS氏(54歳)は言う。 「ネット上にいくつも仮想通貨愛好者のコミュニティがあるのですが、数百万円くらいのビットコインなら現金で買い取ってくれる人がすぐ見つかる。中国人なんかも多いですね。こうした相対の個人間取引は高額な取引所の手数料を逃れるためにもともと、盛んだったのですが、今では税務署にバレずに現金化する目的で利用する人が多いですね。僕も中国人を通じて現金化しました」  しかし、もちろんこの方法も税務署には通用しないという。 「国内にある仮想通貨の取引所は、税務調査をされて、要求されれば取引内容を見せなければいけません。例えば公益の情報提供(タレコミ)が行われたり、SNSで儲けを自慢している人がいると、取引所を調査して投資家を特定し、ウォレット(※3)の取引履歴を見せるように要求するでしょう。いったん目をつけられたら逃げられないのです」(寺田氏)  売買する過程で、国内の取引所を一度でも通すと、理論的には税務署は補捉が可能となるのだ。 <用語解説> ※1 雑所得 所得税法が定める、給与所得や事業所得、不動産所得など9つの所得区分以外のもの。公的年金や非営業用貸金の利子、プロ以外が受け取る原稿料や講演料などが該当。FXで得た利益もこれに入る。株式売買の分離課税とは異なり、総合課税となる ※2 取引所 仮想通貨の売買を仲介する取引所(個人間取引と業者の直接販売がある)。金融庁に仮想通貨交換業者として登録を認められた国内業者は16業者に上る(昨年末時点) ※3 ウォレット 仮想通貨の財布にあたる。多くはオンライン上にあり、取引所内にある他、国内外の複数の業者が提供している。USBメモリに入れられるハードウェアウォレットなどもある 【寺田芳彦氏】 公認会計士・税理士。トラスティーズ・コンサルティングLLPパートナー。三菱UFJ信託銀行、KPMG税理士法人を経て現職。国際税務などを専門 【八木橋泰仁氏】 税理士。税理士法人ファシオ・コンサルティング代表社員。仮想通貨の収支自動計算ツールの提供も開始。https://cryptolinc.com 図版/佐藤遙子 ― [ビットコイン長者]の脱税を暴く! ―

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