更新日:2018年04月27日 13:45
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ビットコイナーとリップラーの深すぎる溝――マンガで覚える「仮想通貨今昔物語」

ビットコインとリップルは何が違う?

 生みの親はカナダ人プログラマーのライアン・フッカー氏だが、発展させたのは2012年にRipple社の前身となるOpenCoin Inc.を設立し、Ripple社のCEOを経て会長に就いているクリス・ラーセン氏。

クリス・ラーセン氏のツイッター(@chrislarsensf)より

 その発想は、ビットコインが既存の通貨の代替通貨になりえるかも?というユートピア的発想が色濃く見えるのに対して、リップルの場合は「送金システム」にほぼ特化していると言っていいだろう。  しばしば「国際送金に特化した仮想通貨」と表現されるように、銀行などの金融機関と提携して“安くて速い”送金を実現するためにリップルは生み出されたのだ。具体的には「XRP」という“仮想通貨リップル”を媒介にして、日本円やドルなど既存の通貨の交換を瞬時に行うことが可能。  リップルがどれだけ安くて速いかという、数億円単位のリップルを送金する場合に発生する送金コストはわずか数銭! 着金までに要する時間は5秒ほどだ。ちなみに、ビットコインは最低10分の承認時間を要すると紹介したが、近年は数時間を要することもしばしば……。おまけに直近では送金時に数千円のコストが伴う。  なぜ、リップルがそれだけ安くて速いかといえば、取引承認の仕組み(コンセンサスアルゴリズムという)がビットコインとまったく異なるからにほかならない。プルーフ・オブ・コンセンサス(Proof of Consensus/PoC)といわれる仕組みで、リップルを事実上管理しているRipple社に認められた特定の人(Validator=バリデーターという)たちが取引の承認作業を担うのだ。  このバリデーターに名を連ねているのは、マイクロソフトやマサチューセッツ工科大学など、世界に名だたる企業や組織だ。ビットコインの取引承認作業を不特定多数の個人や事業者が担っているのに対して、リップルはその道のエキスパートとして認められた人たちだけが承認作業を担うかたち。ビットコインのように大量の電気代を費やしてマイニング競争に明け暮れるようなことがないため、送金コストは各段に安く、かつ承認が早いのだ。  なお、このように承認作業が不特定多数に分散化されておらず、特定の人に限定されているため、リップルの分散型台帳システムは「ブロックチェーンではない!」と言われている。Ripple社もブロックチェーンという言葉は用いず、「XRP Ledger」と呼んでいるのだ。  ビットコインと比較してメリットが際立つリップルだが、実はビットコイナーにはこの仕組みが相容れない。端的に言うと、中央集権的なのだ。 ビットコイン&リップル比較 ビットコインは上限を2100万BTCとして、徐々に4年周期で発行されるビットコインの量が減っていくようにプログラムされているが、リップルの場合は最初に1000億XRPが発行されて、ネットワーク上で取引が発生するごとに徐々に枚数が減少していく設計だ。さらに、その約6割をRipple社が保有している。  もちろん、「一定期間、保有資産を売却しない」と定めたロックアップ条項により、Ripple社は一気に保有するリップルを大量放出できないようになっている。2018年以降は毎月1日に10億XRP分がロックアップ期限を迎えるが、その使途は機関投資家への配分や大手取引所のキャンペーン報酬など、流動性を供給するプロバイダーへの報酬に限定されるなど、XRPには厳しい売却制限がかけられている。しかし、ビットコイナーからすると「XRPの高騰で最も得しているのはRipple社にほかならない!」と見えてしまうのだ。  これに加えて、Ripple社に認められたバリデーターしか承認作業に参加できないという点も、ビットコイナーからすると中央集権的に映る。「バリデーター=信頼できる承認者」だが、ビットコイナーからすれば「Ripple社の子分」といった具合だろう。

北尾吉孝SBIグループ社長は熱心なリップラー

 とはいえ、リップルが実現する送金システムが非常に優れているのは間違いない。すでにリップルの送金システムを使った実証実験を行っている金融機関が数多くあるのだ。中央銀行でいえばイングランド銀行にインドネシア銀行、シンガポール金融管理局など。民間でもバンク・オブ・アメリカやJPモルガン、バークレイズ、BNPパリバ、クレディ・スイス、香港上海銀行(HSBC)など、世界中の名だたる金融機関がリップルの技術を活用した送金システムの実験を行っているのだ。  もちろん、日本国内でも実験が進んでいる。熱心なリップラーとして、投資家の間で知られているのがSBIグループを率いる北尾吉孝社長。Ripple社にも「約11%出資している」と表明している。
大の”リップル厨”としてリップラーの間でも人気の北尾氏

しばしばリップルについてツイートする北尾氏(本人のアカウント@yoshitaka_kitaoより)

 このSBIグループがRipple社と共同運営するSBI Ripple Asia主導の「ブロックチェーン技術等活用した国内外為替一元化検討に関するコンソーシアム」には、三菱東京UFJ銀行(同行はシンガポール金融管理局が主導する国際送金実験等にも参加)や三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループの3大メガバンクに加えて、りそな銀行、新生銀行、スルガ銀行、横浜銀行など61行(2017年12月時点)が参加しているのだ。  世界中の金融機関が「仮想通貨の技術を取り入れるのならばリップル以外にない!」と考えているのは間違いないだろう。  ただ……これもビットコイナーからすれば、「結局、リップルは“体制派”」と映ってしまう。  実は、Ripple社が「○○銀行でリップルが採用されます」と情報発信するたびにリップルの価格はしばしば急騰している。2018年1月5日にはツイッター上で「今年、世界的な5大送金企業のうちの3社がXRPを採用します!」と発信したが、このときもリップルの価格は急上昇。一時的にイーサリアムの時価総額を超えたのだ。

1月のRipple社のツイートを受けてリップルは急騰(coinmarketcapより)

 決してRipple社が価格を釣り上げようと思って発信したとは考えていないが、実際には「金融機関によるリップル採用=リップルの新規需要増加」ではない。金融機関の実証実験では「仮想通貨リップル=XRP」を用いないRipple社独自のソリューションを利用しているケースも少なくない。2017年10月にはメキシコ、アメリカ、香港で事業展開する金融機関CuallixがXRPを使った実送金に成功しているが、このようなケースでもXRPをマーケットから調達しているわけではない。Ripple社からXRPを調達しているのだ。  金融機関等がXRPを利用した送金システムを採用する際、Ripple社は採用企業に対して「オプション契約」に基づいてXRPを卸す取り決めを結んでいる。その実態が明らかになったのは、2017年9月のこと。アメリカのブロックチェーン技術企業で2016年3月にRipple社とパートナーシップ契約を結んだR3社が法廷闘争を起こしたのだ(2017年10月にRipple社が勝訴)。

R3社との訴訟で訴訟したRipple社は興奮気味にツイート(@Rippleより)

 その法廷で、R3社はRipple社と「1XRP=0.0085ドル(約0.9円)」で最大50億XRPを購入できるオプション契約を結んでいたことを明らかにしている。今のレートと比較すれば破格の値段だが、実は契約を結んだ2016年9月の直前1か月間の平均レートは1XRP=0.0070ドル。市場価格よりも少し割高のレートで、パートナーシップ契約を結んだ事業者にXRPを卸していた実態が初めて明らかになったのだ。  おそらくXRPの価値を毀損しないようという配慮があってのことだろうが、ビットコイナーからすると、ビットコインが誰もが参加可能で非中央集権のアナーキーな仮想通貨であるのに対して、「リップルは特定の参加者がコントロールできてしまう既存の通貨制度の延長線上にある仮想通貨」と見えてしまう。仮想通貨黎明期からビットコインの成長を見守ってきた人からすれば、その違いは天と地。  一方で、リップラーからすると、その“政治力”も魅力のひとつ。えりしー氏は「既存の金融システムを壊さないように配慮され、できるだけすんなりと銀行や一般企業が仮想通貨に参入できるようにされている点がクール」と話すのだ。  当然、既存の金融システムや既得権益層に不満を持つビットコイナーからすると、このような主張も相容れない……。画期的な決済システムを実現した仮想通貨界隈では、実に人間的な思想闘争も繰り広げられてきたというわけ。
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モナーコインはビットコインのコピー通貨
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