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薄毛治療の最前線「0.2ミリの毛も映るMRI」はハゲの救世主になるか

わずかな頭皮の変化が写真でわかるMRI技術

「発毛治療で通っている患者さんは、自分の髪がどれくらい増えたのかを知りたいわけです。その確認は通常、頭部の写真撮影で行われていますが、我々は大学病院の協力を得て、超高分解能頭皮MRIという技術を開発中です。より精度が高く客観的な評価を目指しています」(小山太郎医師)  この研究で、従来のMRIでは撮影は困難だと考えられていた頭皮の表皮・真皮、皮下組織、毛包の明瞭な撮影技術を確立したという。  現在薄毛に悩む男性は、日本全国で1200万人以上いると言われている。彼らをターゲットにして発毛・育毛剤やカツラ、植毛など多種多様なビジネスが展開されていて、ヘアケアの市場規模は15年度で4,383億円に上る。  特に植毛市場規模は105.1%の41億円、発毛・育毛剤市場規模は102.8%の672億円と好調だ(矢野経済研究所調べ)。 「患者さんの多くが、内服薬、外用薬で治療を継続していくことで、6ヶ月くらいで毛の増加を実感されます。クリニックでは来院当日に頭部の写真を撮影して、医師が毛の変化を確認して『〇〇さん、こんなに増えましたね』とか、『前と同じくらいですね、悪くはなっていませんよ』などと説明しています。  同じ人の頭部の写真であっても、散髪からの日数が違ったり、髪の色が違ったりすると、印象は変わってしまいます。また、仮に同じ条件で撮影しても、わずかの変化であれば写真ではとらえることができない場合もあります。それをどうにかしたいと思っていました」(小山医師)  髪の変化を客観的に評価するために、一定の面積の毛を剃って太さと数を記録していくという方法があるが、臨床の現場でこれを行っていくのは大変難しいという。 「これが特殊な撮影技術を用いた頭皮のMRI画像です。この頭皮に縦方向に映っているのが髪の毛です。独自の撮影技術の開発で200~300μmの毛包(毛髪の根元部分の構造)をはっきりと画像化できるようになったのです」(小山医師)  1ミクロンとは1000分の1ミリであるから0.2~0.3ミリがはっきり見えることになる。
(メンズヘルスクリニック東京提供)

(メンズヘルスクリニック東京提供)

 この超高分解能頭皮MRIを活用することで、薄毛治療の開発が進む可能性も高まる。 「従来のMRIでは頭皮の微細な構造の撮影は不可能でしたが、超高分解能頭皮MRIを活用することで、患者さんが自分の毛の状態を把握することが可能になります。そうすれば、医師や患者の主観によらない客観的評価が可能になり、薬剤の選択などにも役立つ可能性があるのです。  今のところはまだ限られた症例でしか撮影をおこなっていませんが、今後さらに開発を進めて、MRIで頭部全体の毛の本数などがわかるようになったら素晴らしいと思っています」(小山医師)  他分野の研究者からの協力も得て、この高解像度のMRI画像から「毛の本数」や「毛の太さ」を自動的に解析するソフトを開発中とのこと。 「AGAの診療に超高分解能頭皮 MRIの客観的評価を導入できれば、将来は画像所見を脱毛症の進行予測や治療効果予測へ利用していく可能性についても検証が可能になっていきます」(小山医師)  精度が上がった超高分解能頭皮MRIを使った治療で、周囲の目を気にしてずっと悩んでいた薄毛男性が自信を取り戻す日も近いかも!<TEXT/ジャーナリスト・草薙厚子>
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