元巨人・桑田氏が物申す。日大アメフト問題に限らない“若者をダメにするスポーツ指導者”の現実
日本大学アメリカンフットボール部の悪質なタックル問題、元日本レスリング協会強化本部長のパワハラ騒動、インターハイ出場を懸けたハンドボール決勝戦での大体大浪商のラフプレー隠蔽疑惑……スポーツ指導者の資質が問われる問題が次々とニュースになっている。
そこで、頭脳派で知られる元読売巨人軍の桑田真澄さんに、スポーツ指導者の問題点について、インタビューを行った。
インタビュー当日、桑田さんは、昨年設立された新しい少年硬式野球の公益社団法人「グローバルベースボールリーグ」主催による「少年野球の指導者講習会」で講師を務めた。
現在、東京大学特任研究員として科学的な指導法を研究している桑田さんは、パワハラや根性論がはびこる現在のスポーツ界をどう見ているのか?
――まずは巷で社会問題にまで発展している日大のアメフト部タックル問題やレスリングの指導者の問題をどう思われますか?
桑田氏(以下、敬称略):コーチとしての資質を疑う問題だと思います。そもそもコーチの語源は、ハンガリーのコチという村で作られた四輪馬車のことで、『目的地まで大切な人を馬車で送り届ける』という意味なんです。つまり、コーチはプレーヤーの目的達成をサポートする伴走者でなければならないんです。
日大アメフト部の問題に批判が集まったことからもわかる通り、日本の社会全体として指導者が若い選手に絶対服従を強いる関係に違和感を感じているのだと思います。そして、これからのスポーツ界で求められるのはスポーツマンシップを実践できるコーチでしょう。
子どもたちは、大人をよく見てるんです。「挨拶が大事、努力が大事、フェアプレー精神が大事」と指導者は口を揃えて言いますが、果たして全てのコーチがそれを日々の練習・試合で実践しているでしょうか。それができるコーチこそ若い選手のロールモデルであり、そんなコーチに選手たちは付いていくはずです。
――少年野球にも暴言とか暴力とかまだあると聞きます。体罰の問題とかも出てきますよね。
桑田:スポーツでミスした選手を批判するのは簡単です。でも僕はそうしたやり方はコーチングの効果が薄いと思います。なぜなら、誰もがミスするのがスポーツの本質だからです。プレーする選手はもちろん、コーチの技術指導も試行錯誤だし、試合で采配を振るう監督にもミスは付きものです。
ですから、ミスした選手を怒るよりも「なぜミスしたのか」、選手に考えるきっかけを与える方が効果的だと思います。「いまエラーしたのはスタートが遅れたからじゃないか」とか「グラブを上から下に出したよな」とか。その上で、「次はボールを待つ姿勢を変えよう」とか「グラブは下から上に使おう」と改善のアドバイスをすべきでしょう。
僕が少年野球の選手だった頃、僕より体格に恵まれたり、素質がある選手が何人もいました。でも彼らのほとんどは、プロ野球にたどり着くことなく野球をやめてしまいました。彼らはコーチから「三振してもいいから3回思い切って振ってこい」とアドバイスされたにも関わらず、実際に三振して戻ったら「歯を食いしばれ」と殴られるような指導を受けていたんです。
そんな指導に萎縮して当てるだけのバッティングになった選手もいれば、体罰が理由で野球を嫌いになった選手もいました。僕はそんな指導を実際に経験しているからこそ、今の若いアマチュア選手にはミスの修正法を提示するコーチングを広めたいんです。

体罰や暴言でスポーツをやめてしまう子も

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