「がむしゃらに頑張るのはムダ」元巨人・桑田真澄氏が断言する理由
監督・コーチに絶対服従で、授業にも出られず、練習漬け――そんなアマチュアスポーツの現状を、元読売巨人軍の桑田真澄さんは変革しようとしている。
昨年設立された新しい少年硬式野球の公益社団法人「グローバルベースボールリーグ」主催による「少年野球の指導者講習会」で講師を務めた桑田さんに、インタビューを行った。
前回の記事では、現在のスポーツ指導法の問題を鋭く指摘した桑田さん。なんと小学生の時から疑問を感じていたという。
――現役の頃は指導の仕方に疑問は抱かなかったんでしょうか?
桑田:僕は小学生の時から野球界の指導方法に疑問を抱いていました。なんで殴られなきゃいけないのか、どうしてこんな長時間練習しなければいけないんだろう、とか。ピッチングフォームの指導も、言われた通りに投げようとすればするほど球が走らなくなりました。
そこで中学生の頃からプロ野球や甲子園で活躍する投手の連続写真を集めて、名投手のフォームの共通点を研究してきました。
あるとき気がついたのは、「実際の動き」とコーチが指導する際に使う「言葉」には大きなギャップがあるという事でした。
――どんなギャップでしょうか?
桑田:例えば、投手への指導では「トップを早く作りなさい」と言われますが、エースと言われた投手のピッチングフォームを見ると誰もそうやって投げていないんです。言葉にする感覚と実際の動きにギャップがあるわけです。
このギャップがなぜ起こるのかというと、昔は自分のフォームをスローモーションで見ることができなかったので、感覚が優先されたと考えています。しかし今は、スマートフォンですぐにフォームをチェックできるんです。ですから、道具の進化に合わせて、指導法もより実際の動作に近づける努力が必要だと思います。
野球界では時代とともに道具も戦術も進化していますが、唯一進化が遅れているのが指導法だと思います。昔は、練習中に水を飲んではいけないと言われていましたが、スポーツ医科学が発展したいまでは水を飲むのが当たり前になりました。日本の選手は身体的な素質では劣るわけですから、こうした科学的な研究の成果を活用することが大切だと考えています。
――走るのが一番大事、走らなかったから負けたんだと言ってる方もいらっしゃいますよね。
桑田:僕も含めて誰でもたくさんバットを振ったり、走った時期は当然あったと思います。ただそれは毎日ではないでしょう。大事な試合から逆算して、そういう日もあったということです。
それに20代を過ぎたプロ野球選手のように、身体ができ上がっていればたくさん練習することもできると思います。しかし、身体が成長過程にあるアマチュア野球では、オーバーワークで故障すると選手の将来に関わります。
僕は気合と根性で片付ける指導は良くないと考えています。なぜかと言うとそれでは勝てないからです。もちろん勝負に勝つためにはメンタルタフネスが必要ですし、対戦相手と同等の実力なら、気合と根性がある方が勝つでしょう。でも相手と互角あるいはそれ以上の競技力に達するためには、合理的なアプローチで技術と体力を磨くべきだと思います。
小学生の時から、指導法に疑問を持っていた
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