海産物がヤクザのしのぎになっている…暴力団、外国漁船が高級魚を密漁
組織的ビジネスとしての密漁を防ぐため漁業権が設定されており、商売を妨げない=漁業権侵害をしない限りは一般人も同じ漁場で漁ができるということだ。
「ただ、漁業権の侵害は親告罪なので、権利を持つ漁協が告訴する必要があります。そのため密漁対策では漁協が見回り強化などを行い、状況に応じて警察や県、海上保安庁などとも連携しています」
一方、沖合(排他的経済水域内)では、水産庁が中心に取り締まりを実施している。しかし、こちらでも密漁は後を絶たないそう。
「ここ数年で明らかに中国船の違法操業が増えています。しかも違法操業らしき船を発見しても、検挙にまで結びつけるのは難しい。密漁者も証拠を残さないよう工夫をこらしていますし、発見されたときは『場所を間違ってしまった』と言い訳をします」(水産庁)
さらに密漁された魚介類でも、いったん流通してしまえば、仲介業者や加工業者はその出自を気にはしない。加工業者の平秀人氏(仮名)は「ウチも『どこで獲ったの?』とは聞かない」と話す。
「シーズンを終えても変わらず作られているカキやウニ、イカなどの加工品は、密漁品も使っているはず。密漁品が多いとされているのはナマコで、あとはカニ、イクラ。やはり高級食材が多いですね」
密漁を巡る負のループはさらに続く。摘発されても密漁団がなかなか消えないのだ。鈴木氏によると、密漁事犯で押収されたボンベや潜水具などは検察庁が非公開の競売で売却するが、「入札するのは押収された密漁団の息がかかったか、地元の古道具屋」。北海道のナマコの密漁団は、真冬でもボンベ屋に充填を頼むので、地域では公然の秘密としてその存在が広く知られているそうだ。
密漁者を放置しておけば、乱獲によって枯渇が進むアワビのように、生態系が崩れるケースも増えていく。「密漁は遠い海の上の話」では済まないのだ。
<写真/時事通信フォト>
― 密漁が日本の海を殺す ― 1
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