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W杯日本×コロンビア戦 現地レポ――「サランスクの奇跡」そして我らは人気者となった

 試合が近づくにつれて盛り上がるスタジアム。44000人ほど入るスタジアムの8割が黄色、残りが青といっったところだろうか。日本人サポーターの応援も聞こえてくるが、黄色い集団の声にあっという間にかき消されてしまう。選手が入ってきたときは最高潮の盛り上がり。ただ、先発メンバーにエース、ハメス・ロドリゲスが入っていないのには驚いた。

選手入場の瞬間。鳥肌が立つ瞬間だ

 国歌斉唱はコロンビアから。ちょっと音痴だけど大声で歌うコロンビア人たち。歌声が観客席上の屋根に跳ね返って地鳴りのよう。跳ねるようなリズムで勇ましい国歌は、戦いの歌だろう。続いて日本国国歌。ワールドカップで流れる君が代には毎回鳥肌が立つ。国歌斉唱で感極まる選手がいても当然だろう。

四方を囲んだコロンビアサポーターの歌声は迫力がある

 キックオフ。いきなりのファウル、そしてPK判定。記者の反対側での出来事なので何が起きているかわからない。隣のイギリス人男性が冷静に「ハンドで相手DFがレッドカードで退場だ」と教えてくれた。香川のゴールで先制! シーンと静まり返るスタジアム。喜んでいるのはちらほらいる日本人と地元っ子のみ。すぐさま地鳴りのような歌声が始まり、選手を鼓舞するコロンビアサポーター。

スタジアムの一角に固まっていた日本人サポーターも、先制点で俄然元気に

 前半終了間際、ゴール前での日本のファウル。相手のフリーキックは壁の下を抜け、滑るようにゴールへ。GK川島がギリギリで止めたに見えたが、ゴール判定。微妙な判定に一時試合が止まる。コロンビアサポーターは「ゴール、ゴール」と盛り上がる。一方の記者は「いや、入ってないぞ!」と敢えてコロンビア人に聞こえるように叫ぶと、爆笑された。

太鼓隊が客席を回ってサポーターを鼓舞する

 結果はゴール。1−1に追いつかれてしまった。蘇る4年前の記憶。初戦のコートジボワール戦も先制しながら、途中出場した相手エースドログバに流れを替えられて立て続けに同点、そして逆転された。なんとか前半終了。相手は一人少ない10人だというのに全くそれを感じさせない。  隣のイギリス人も「このままだと後半危ないかもね」と言う。不気味な伏線は張られた。後半早々、ハメス・ロドリゲスが交代で登場。4年前のドログバのときのように会場の空気が変わった。そこからテンポが良くなるかに思えたが、それを見越したように、ゆっくりと横にパスを回しだす日本。会場はコロンビアサポーターの大音量の口笛に包まれる。それが仇となったのか、焦れてファウルを犯すコロンビア。試合は膠着状態となった。  そこで登場したのが本田圭佑。香川との交代で入ると、地元のロシア人が喜んでいる。ロシアでプレーしていただけあって、人気は高い。これでまた会場の雰囲気が変わった。ロシア人がホンダ、そして日本を応援しはじめた。  そして生まれた大迫の決勝ゴール。本田のコーナーキックからのヘッドはポストに当たり、ゴールに吸い込まれていった。目の前でのゴールに記者も大興奮。一瞬静まり返るも、また大声で歌い出すコロンビアサポーター。より一層音量はデカくなる。

大迫の決勝ゴールに呆然とするコロンビアサポーター

 攻め手を欠くコロンビア。90分を回り、アディショナルタイムは5分。観客席を見ると、帰りだすコロンビアサポーターが。負けを見たくないのだろう、ぞろぞろと出口に向かっている。そして試合終了! 勝利の瞬間、日本語のウガスカジーの曲が会場に流れた。

試合終了!

 前後のコロンビアサポーターから握手を求められる記者。「勝利、おめでとう」と次々に声をかけられる。「次のゲームがある。そっちも頑張れ」と返すと、記念撮影を求めらた。  試合が終わると引きが早い。勝利の余韻に浸る日本サポーター。コロンビアサポーターはあっという間に観客席からいなくなっていた。  街に戻ると、今度はロシア人から握手攻め。記者は試合に出たわけでもないのに青いユニフォームを着ているだけでこの歓待ぶり。たどたどしい英語で「素晴らしい試合だった、本当におめでとう!」「強いね日本!」とわざわざ言いにきてくれる。あるいはスマホの翻訳で「あなたたちは次も勝てるだろう」などと、エールを送ってくれる人も。  日本語を少し勉強しているという地元の女のコからは「本当におめでとうございます」と言われ、浮ついた気分に。このあと行われたロシア代表の試合をパブリックビューイングで、ロシア人とともに応援したが、そこにいたコロンビア人がみな座り込んで疲労困憊だったのには笑ってしまった。

パブリックビューイング会場でへたりこむコロンビアサポーター

 他の日本人も記念撮影を頼まれたり、コロンビアサポーターとユニフォームやグッズを交換するなど、試合後夜遅くまで交流は続いた。この6月19日は現地にいた日本人にとっては最高の日となった。 取材・文・撮影/遠藤修哉(本誌)
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