大人の発達障害、職場で感じる困難「気づくと同僚が怒っている」
「仕事の優先順位がつけられない。タスクが増えてくると気になって手をつけてしまい、結果的にすべてが中途半端に。思考が停止することがよくある」(34歳・IT)
「早急に連絡をしなければいけないときも、何度も何度も文章を練ってなかなかメールできない。それで結局、事故る」(36歳・営業)
「僕はADHDで、とにかく絶対に忘れごとをする。忙しくなると目の前の仕事を片付けずに次にいってしまい「今度の会議の資料です」と上司に持っていくと、『それより前の会議の報告書は?』と言われたり。『一つずつ片付けよう』と理解のある上司は言ってくれるけど、それが情けなくて自己嫌悪でいっぱいになる」(33歳・食品)
ほかに「仕事中、気づいたら机の上がグチャグチャになってる。書類の山ができていて、いつも何かをなくす」(40歳・建設)というように、整理整頓ができず、なくし物が多いのも大きな特徴だ。
「発達障害の人が部下ならまだしも、上司だと下の人間は非常に混乱してしまう。いわゆる『ADHD上司』という存在です。ただ、会社によっては『チャーミングな人だ』と受け入れられることもあるので、そこは当人のキャラクター次第なんです」(産業医・大室正志氏)
とはいえ、このようなミスは発達障害ではない人だって起こすことでもある。そのせいか、ミスが続くと「発達障害じゃないの?」と疑惑をかけられることすらあるという。発達障害の解釈が妙な方向へ広まる現状は、本当に困難を抱える人にとって“イバラの道”になりつつあるのかもしれない。
【大室正志氏】
産業医。産業医実務研修センター、ジョンソン・エンド・ジョンソン統括産業医を経て現職。専門は産業医学実務。約30社の産業医業務に従事
撮影/水野嘉之
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