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ヤクザの厳しいお中元事情「タオルに洗剤…今や一般家庭並みのショボさ」

 しかし、まだ「送ってもらえるだけマシ」とも話す幹部。以前の付き合いがなかったかのように幹部ら組員に無視を決め込み、年賀状の一枚も、さらには付き合いのあった組員の葬式にすら来ない“義理に欠いた”市民もいる。 「明太子ばもろうて怒った同業者の気持ちはわかる。この2~3年で、我々は人間として扱われんごて(扱われないように)なりました。しかしまだ、お中元やら年賀状やら送ってもらえるだけマシですよ。葬式まで来ん、となったらね……。我々も普段は威勢張ってやっとりますけども、そこまでされたら“やおいかん(どうにもならないくらい大変)”ですよ」 博多祇園山笠 守代やショバ代、フロント企業からの上納金といった、これまでヤクザが“主な収入”を得るためにやってきたシノギ(仕事)は、ことごとくできなくなってしまった。ヤクザの家族ですら世間からは白い目で見られ、まさに「ヤクザに人権なし」といった情勢だが、カタギ(一般人)からも無視され、一番重要視してきた冠婚葬祭などの義理事までないがしろにされると、さすがの幹部も心が折れかけているという。 「家内からもね、言われるとですよ。農家ば継いだ弟に頭ば下げて実家に戻り、カタギに戻りんしゃい!て……。おい(私)はもう60ですよ? 組におっても仕事はなか、若っかもんも当番(事務所の雑事)に呼んでも来ん。今さら助けてとは言えん立場ですけどね、お中元いっちょで文句垂れるくらい、追い込まれとるのは確かです」  条例や、暴力団対策法によって真綿で首を締め上げられるかのように、すでに生きる権利すら奪われつつあると嘆く幹部……。

義理や人情はどこにやら…

「以前は義理やら人情やと言うてですね、市民相手に好き勝手しよったのが彼らです。我々もいくら(金を)払ったか、取られたかわからんくらいです。ざまあみろと思ってましたけど……。お巡りさんも国も、ちったやり過ぎかなとは思いますよ。彼らが食い詰めて、他に何もすることがなくなったら、そら犯罪に走るしかなかでしょうし」  こう話すのは、福岡市の中心部・中州で複数の飲食店を経営する男性(40代)だ。かつては必要悪として、国家すらが見て見ぬをしてきた存在が、用済みとなった瞬間に放り出された現実。ヤクザの救済策を各自治体が行っている事例もあるが、まだ十分ではない。前述の幹部が力なく言う。 「こげなことばネタにされる…。これが一番情けなか。昔やったらあんた(筆者)のことくらわしとった (殴ってた) ばい。もうそがん気力もなか……」  ヤクザにとって厳しい時代と言われて久しいが、お中元にもその影響がきているようだ。<取材・文/伊原忠夫>
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