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現代ヤクザの抱える「生きづらさ」…生活苦で日給5000円のアルバイトに励む日々

「ホンマにキツい。“ヤクザは死ね”と言われとるようなもんでしょう……」

 関西に本部を置く、広域指定暴力団関係団体幹部のX氏がため息交じりに語るのは、現代ヤクザの「生きづらさ」についてである。今年に入り、暴力団員が逮捕されたという事案が相次いだが、その理由が驚くべき内容だったのである。

「暴力団員であることを隠し、郵便局で一日だけアルバイトして7850円を詐取したとして、愛知県の山口組系の暴力団員の男が逮捕されました。続いて、警視庁に逮捕された暴力団の男が、LINEのスタンプを販売していたのではないかと捜査されています。これが資金源になるのではないか、という見立てだそうです……」

 当局の「暴力団は許さない」という強い姿勢が見て取れるが、郵便局でアルバイトをした暴力団員は「生活苦だった」と話しているという。

 もちろん、これらのお金を組織の資金源にしたり、アルバイト先で個人情報の収集をしようとしていたのではないかなどの見方もできるのだろうが、実際に暴力団対策法の強化や暴力団排除条例の制定によって瀕死の状態にまで追い込まれたヤクザたちからしてみれば、これらの動きはたまったものではないらしい。

絶望

※写真はイメージです

カタギに戻ったつもりでいたら…


 茨城県に住む現役の暴力団員・山里雄介さん(仮名・30代)も、自身の置かれた境遇について次のように訴える。

「10代後半に組に入り、繁華街の見守りなんかをやってきました。ただ、この数年は知人の建設会社でアルバイトをして生計を立てていて、組関係者とは全く連絡を取っていません。自然に“切れているだろう”と思っていたところ、建設会社に警察から問い合わせがあったんです。お前のところヤクザ雇ってないか、と」

 山里さんが所属していた暴力団組織は、この数年の取り締まりにより事実上の解散状態に追い込まれていた。組織から遠ざかった組員らは食っていくために、それぞれ様々な仕事をしていた。とある飲食店チェーンに正社員として就職し、妻と子どもを養う知人もいた。皆、すっかり自分は「カタギ」に戻った気でいたのだろうが……。

「名前も知らない組員が逮捕され、その突き上げ捜査で昔作られた組員名簿の存在が発覚。名簿には私を含めた複数名の名前が載っていたんです。組織を離れるにしても引き留められたり脅される可能性もある。地元に戻っても、元暴力団のレッテルから逃れられない。そりゃ、身から出た錆だとは思いますが、ちょっと生きるのがツラすぎます」

 こうして食い扶持を失った山里さん。一時期はまた組織に戻り、食うためのなりふり構わない「シゴト」に手を出そうとしたが、結局は思いとどまった。

履歴書

プライドを捨て、日給5000円のアルバイトに励む日々


 警察にはすべてをさらけ出し、NPO団体を通じて紹介を受けた県内の農業施設でアルバイトをこなす日々を送る。日給はわずか5000円ほど。職場には元引きこもりなど、生活支援施設から通う従業員もいる。そういった「世界」では、自分に歯向かうものはおらず、街を肩で風を切り歩いていたという「プライド」も今ではすっかり消え去った。また、一度ヤクザになってしまうと、一生“元ヤクザ”の十字架を背負っていかなければならず、社会復帰が極めて厳しいという現実に打ちのめされる。

「警察などの支援はありがたいが、このままでは普通の生活はできません。まじめに何年かやれば、一般企業に勤めたり、社会の目を気にせず暮らせるようになるのか……。私が悪いのはわかっている。でも、いつか心が折れないかという不安に押しつぶされそう、それが本音なんです」<取材・文/伊原忠夫>





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