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セブン「100円生ビール販売中止」の背景をバー経営者に聞く。瓶ビールより不味い場合も…

おいしい生ビールには、サーバーのメンテナンスは欠かせない

 この作業をサボるとどうなるか?  それはビールがまずくなるのだ。1日や2日ではわかりにくいが、1週間も経たないうちにビールの酵母などが付着して酸化し、変な臭いがしてくる。一切メンテナンスしていないであろう居酒屋で究極の劣化ビールが出てきたことがあるが、罰ゲームだとしても飲みきれるものではない。メンテナンスはとても重要な作業なのだ。  ビールはもともとトップクラスに原価率の高い商品だ。原価BARだとウイスキーのハイボールは100円以下だし、ズブロッカは80円、本格的なカクテルでも120~220円といったところで、驚いてもらえる。しかし、生ビールは180円。「あ、そう、ふーん、そんなに安くないんだ」と言われてしまうのが悔しいところ。しかも、上記のようにオペレーションの負荷が高く、チューブ内のビールを破棄するというロスも発生する。みなさん、美味しい生ビールはスタッフ(とメーカーの店舗担当者)の努力の結晶なので、じっくりと味わって頂きたい。

サーバーメンテに不安がある店では瓶ビールを頼むべし!

 あと、そもそも論として、一般的な「生ビール」は使い方が間違っていることも覚えておきたい。「生」はサーバーから出てくることではない。ビール酵母が生きているかどうかのことで、今のビールはほとんどが生ビール。缶ビールだろうと瓶ビールだろうとすべて生ビールなのだ。同じ銘柄であれば、ビール樽と瓶ビールの中身はまったく同じ。瓶ビールはクオリティが保たれているが、ビールサーバーを使うと上記のようにメンテナンスしないと劣化する可能性があるのだ。  わざわざビールサーバーを利用する唯一のメリットが泡にある。クリーミーな泡を手軽に付けられるので、口触りがよく、コクをしっかりと感じられるのだ。サーバーから注いでいるのに泡を入れないなら、劣化の可能性のない瓶ビールを頼んだ方が理論的と言える。筆者も、初めての店に入って、クリンネスに不安がある場合は必ず瓶ビールを注文するようにしている。

100円生ビールを販売予定だった店舗には、このようなお詫び文が

 このように販売する側には負荷が高い生ビール。セブン-イレブン本部が100円生ビール販売の中止を決めたことは、いたしかたないと思える。 <文/柳谷智則>
お酒を毎晩飲むため、20年前にIT・ビジネスライターとしてデビュー。酒好きが高じて、2011年に原価BARをオープン。2021年3月には、原価BAR三田本店をオープンした。新型コロナウイルス影響を補填すべく、原価BARオンライン「リカーライブラリー」をスタート。YouTubeチャンネルも開設し生き残りに挑んでいる
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