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アレフ、ひかりの輪…オウム死刑執行でも消えない近隣住民の不安

上祐と話し合った麻原Xデーの対応

 その後、取材班はアレフから分派した上祐史浩が代表を務めるひかりの輪の本部が入る、世田谷区のマンションに向かった。  入り口横には警察と公安の詰め所が2つあり、マンションの壁には反オウムの横断幕が掛けられ緊張感が漂う。マンション管理組合の男性に話を聞いた。 「アレフが来たのは’00年。一時は向かいにも信者が住みついて、130人近い信者がこの一角にいて“小さな村”状態でした」  アレフとひかりの輪に分裂後は、上祐史浩をはじめとしたひかりの輪がそのまま残り、1~2階のフロアはひかりの輪。3~5階は一般の住民が暮らす。 「彼らが来てから、私たちの生活は大きく変わりました。一致団結して立ち向かうために連絡は密になり、『ウチの嫁の帰りが遅いんだよ』なんて言われて、『奥さん、今日はパートで遅い日じゃなかった?』なんて返すくらい。まるで長屋のような付き合いをしています」  とは言え、同じマンションにいる以上、教団との接触は不可避だ。 「水道工事など、マンションとして避けては通れない問題の対処については書面でやり取りします。それと大勢の信者が集まったりする際は、混乱を避けるために事前の連絡をもらいます」  教団とやり取りはあるが、あくまでも実務レベルでの付き合いだと強調する。こうしたやり取りのおかげか、ここ数年は大きな騒動もなかったところでの死刑執行である。 「実は上祐とは麻原死刑のXデーについて昨年から話し合っていたんです。彼は混乱を避けるために記者会見は別の場所で行うと言っていたのですが、当日の朝6時、中継車がやってきて騒然とし始めたんです。テレビ局の方に聞いても『行けと言われたから来ただけ』と。そしたらテレビの速報で死刑執行が流れてきたわけです」  ひかりの輪目当てにやって来るのは報道陣だけではない。それが住民たちに大きなストレスを与えているという。 「勝手にマンションの中に入り込んで写真を撮りまくる人や、『上祐に会わせてくれ!』と言って一般住民の部屋に押しかける人、座り込んでブツブツ言ってるおかしな人など、とにかく“迷惑な人たち”がやって来るんですよ」  過去には右翼団体が教団の部屋に向けて発砲する事件も起きている。住民たちは日々危険と隣り合わせで生活しているのだ。裁判も終わり、死刑執行でオウム事件は“一区切り”という意見もあるが、マンションの住民にとってオウム問題は現在進行形なのだ。 「マンションの価値は下がり、100万円なら買うと言われて愕然としたことがあります。3000万円で購入したのにですよ。修繕もあまりしていません。したところで彼らがいる以上はマンションの価値は上がりませんからね……」  ところどころ塗装が剥げたままになっている手すりから、住民たちの苦悩の日々が伝わってくるようであった。 ― オウム真理教とは何だったのか? ―
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