雑学

小林よしのり、オウムに暗殺されかけたあの日々を語る

 オウム真理教が数々の事件を起こしていた当時、坂本弁護士一家失踪事件について、SPA!連載中の『ゴーマニズム宣言』で独自検証の上、オウムの犯行を示唆したことで、教団から名誉棄損で訴えられた小林よしのり氏。’95年の地下鉄サリン事件後もオウムを擁護する編集部と、教団に命を狙われた小林氏は対立、結果SPA!を去った。

小林よしのり そして今年4月、古巣の本誌で連載を復活させると、時を置かずして教団幹部7人の死刑が執行された。オウムとの奇妙な因縁を感じる小林氏は、死刑当日の7月6日にはブログで「よくやった」と法務当局に賛辞を送った。

「死刑反対論者や人権派弁護士、反権力の言論人から死刑執行を批判する声が上がるのが目に見えていたから、彼らと闘う宣言をいち早く出して威嚇する必要があった。わしだって安倍政権は大嫌いだが、国家のやることすべてに反対しているわけじゃないし、国家が決断しなければならないことは現実に存在するわけです」

 死刑執行に異を唱える知識人の論調は、形を変えたオウム擁護論と受け取られかねない危うさを孕む……。それは当時、支配的だったオウム擁護のムードにも重なる。

 小林氏がオウムと接点を持ったのは、坂本弁護士一家失踪事件の風化を懸念する弁護士から協力の依頼があった’94年のことだ。

「坂本弁護士のアパートを独自に検証して、坂本弁護士が自ら蒸発する可能性などないと確信した。考えられるのは、拉致のみ。それで、ゴー宣で『決めつけはいかんよ』と断りつつ、『オウ……』まで描いたら、たちまちオウムから抗議がきた。当時、世間は『坂本事件は解決済み』『オウムの仕業ではない』という風潮で、学者や文化人がこぞってオウムを擁護していた。その代表的な宗教学者・中沢新一と麻原の対談でも、中沢は『オウムの犯行ではない』と言い切り、他の宗教学者たちは『ポストモダンの新しい宗教』『子供のように純粋』とオウムを礼賛し、一般人の警戒心を解いていた」

麻原にスーツを着せれば化けの皮が剥がれた


 オウムが誕生した’80年代中ごろ、日本では旧来の学問と一線を画するポストモダン的な潮流として「ニュー・アカデミズム」が勃興し、思想家・浅田彰の『構造と力』、中沢新一の『チベットのモーツァルト』が現代思想書として異例のベストセラーになった。中沢の処女作『虹の階梯』はオウムの教義のタネ本となり、麻原は「ポア」という言葉を知る。

 さらに当時、人間の潜在能力の無限性を強調し、個人の霊性向上を目指す「ニュー・エイジ」思想が世界的に流行していた。

「’91年に『朝まで生テレビ!』で『幸福の科学VSオウム真理教』をテーマにしたときも、知識人の大半はオウムを擁護し、幸福の科学バッシングに終始したのは、幸福の科学の出演者がスーツを着ていたからだ。スーツは近代の象徴で宗教っぽくない。一方、オウムは貧相で素朴な宗教服で、反近代だから本物の宗教という論調です。後のわしとテリー伊藤との対談でも『麻原はあのわかりやすい身なりだから騙せた』という話になって、『麻原にスーツを着せれば、一発で化けの皮が剥がれる!』と(笑)」

小林よしのり
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ついに教団に命を狙われる

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