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老親が簡単に詐欺に引っかかってしまう理由。子供のことを考える親心が裏目に…

老親はポジティブバイアスに支配される

 ここ数年で急増中だという「原野商法の二次被害」も、子供に迷惑をかけまいとする親心が裏目に出たパターンといえるだろう。 e80133f7ccee662f74898078f7cf493d_s「原野商法とは、もともとは1970~’80年代に流行した詐欺の手口で、まったく価値のない原野を『将来値上がりする』などと騙して高値で買わせる手法でした。そして近年、かつてこの手口に騙された人々を対象に、再び詐欺が行われるようになっています」(国民生活センター)  当時、原野商法の被害に遭った人々の多くはわれわれの親世代。価値が上がらないままの原野を所有している人たちに「あなたの土地を高値で買い取る」と電話で勧誘し、手続き費用や土地の管理費と称して金を騙し取る手口が横行しているのだという。騙されて購入してしまった土地を子供に相続させたくない……という親のプライドに付け込んだ手口なのだ。  こうした詐欺に老親が簡単に引っかかってしまうのはなぜか。高齢者のメンタリティに詳しい医師の平松類氏は「高齢者はポジティブバイアスを抱きやすいから」だという。つまり、物事の悪い面よりいい面を見がちだということだ。 「ポジティブバイアスは、残された人生の長さを考えると自然に起きてくること。誰だって余命が1年だったら、『この相手は自分を騙そうとしているのではないか』と考えるより、『きっと自分のためを思って親切にしてくれているに違いない』と考えたくなりますよね」  これもまた避けられない老化現象である以上、子としては騙されやすい親に腹を立てるより、親に余計な心配をかけないよう自立したり、親の不安に耳を傾けたりすることが何よりの予防線になる。  それにつけても気になるのは、親がお金のトラブルに巻き込まれたことがあるかどうか、「わからない」とアンケートで回答した人の多さ。この無関心ぶりこそが詐欺の温床なのではないか。 ●親が高齢になってから、お金のトラブルや詐欺に巻き込まれたことはありますか? (40~59歳男性300人が回答) ある 10.7% ない 67.3% わからない 22% 【平松類氏】 医学博士。昭和大学兼任講師、日本松眼科病院眼科専門医。老人の症状や悩みに精通する。著書に『老人の取扱説明書』(SBクリエイティブ) イラスト/さとうただし アンケート協力/エコンテ ― [老親のカネ]防衛術 ―
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