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Google、Facebookを倒せ! 新興プラットフォーマーに降りかかる難問と課題



年収分の不労所得が得られるなら提供する


 一方で、人工知能やブロックチェーン技術を専門的に開発するオルツのCTO・西村祥一氏はこうした懸念は払拭されつつあると見ている。同社ではテキスト、音声、画像に加え、脳波や生体情報などあらゆるパーソナルデータを収集・統合し、個人の思考を完全に再現したデジタル人格「パーソナル・アーティフィシャル・インテリジェンス」(略称:P・A・I)をつくりだす研究・開発を続けている。

「技術的観点から言えば、ブロックチェーンや暗号化技術、また人工知能を組み合わせることで、個人がパーソナルデータを安全に保管・利活用できる状況は現実的になりつつある。GAFAにパーソナルデータを握られるのが嫌だという風潮が、ユーザーレベルで徐々に広がる傾向は確かにあると思います。私の周りにも、多少不便になろうとも、フェイスブックやGメールを使わないという知人が増えてきた。そういう人たちにとって、パーソナルデータの主権を取り戻せる代替サービスがあれば、そちらに乗り換えるという選択肢は十分、あり得ます。ただそうなった場合、GAFAを倒すのは新興プラットフォーマーというよりは、データを企業に与える権限を持った“民衆”になるのではないでしょうか」

 オルツでは、実際に「主権が企業から個人に戻る」というパーソナルデータ市場のシナリオを想定しており、P・A・Iについても、個人が企業にデータを売買するモデルではなく、データへのアクセス権限を許可もしくは付与するというコンセプトで開発を進めているという。

 西村氏はまた「技術的にパーソナルデータを安全に守れるかという問題と、各国の規則や法律に則っているかというのはまた別の問題」とも指摘する。例えばGDPR(EU一般データ保護規則)には個人が企業のデータベースからパーソナルデータの一切を削除する権利、いわゆる「忘れられる権利」が明記されており、暗号化、もしくは暗号化したデータを復元するカギを破壊しても、データを削除したことにはならないとする解釈が有力だという。要約すれば、ブロックチェーンにパーソナルデータを保存すること自体が“アウト”という極端な法規制もあり得るということになる。

ブロックチェーン

各国のパーソナルデータ取扱の状況

 なお、パーソナルデータの取り扱いに関する法律や規則は、欧米や日本、中国など地域によって異なる。新興プラットフォーマーは、各国の法律に準拠させなくてはならない。

 専門家の意見を聞いてみた限り、ブロックチェーンやトークンを活用したパーソナルデータの取引市場が実現するにはまだ多くの課題がありそうだ。

 しかし、ある国内ブロックチェーン企業の技術開発者は「意外とすんなり受け入れられるのではないか」と私見をこう披露した。

「ユーザーがパーソナルデータを販売した見返りにトークンを得て、それがビットコインのように短期間で何倍、何十倍の価値に跳ね上がったとしたらどうでしょう。例えば自分のパーソナルデータの総額が年収に匹敵する報酬になるのであれば、どんどん売りたいというユーザーが出てくるでしょう。遺伝子データに高値がつく可能性もある。今、トークンが上場し、法定通貨とペッグされることは珍しくなくなっています。いずれ、パーソナルデータを売って“億り人”になる人も出現するかもしれない」

 GAFAをはじめ、ひと握りのIT企業に自分たちのデータが都合のいいように使われ、マネタイズされていることに不信感を抱き始めたユーザーは多い。

 それならば、有意義に販売してお金に換えようという発想が生まれてきても決して不思議ではないだろう。しかも不労所得になるのであれば、なおさらのこと。新たなプラットフォームが普及する素地は十分にある。パーソナルデータは、個人にとっても「未来の石油」になり得るのか。

<取材・文/河 鐘基 出水鴻正(Roboteer) 図版/佐藤遥子>
― ブロックチェーンでグーグルを倒せ! ―

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