グーグルやアマゾンに個人情報を握られている…データを取り戻す、注目の技術とは
米シリコンバレーで今、多くの起業家たちは「どうやったらグーグルやフェイスブックを倒せるか」について頭を悩ませ、アイデアを模索している。たどり着いた結論は「データを取り戻せ」。いったい、何が起きているのか。
グーグルやアマゾンに個人情報を握られていることをあなたはどう考えているのか。「気にしない」という人もいれば、「気持ち悪い」と思う人まで千差万別だろう。
だが、個人情報を握られたくないという人たちの欲求を満たすことが大きなビジネスチャンスになるかもしれない。今、パーソナルデータを流通させる新たなデジタルインフラになり得るとして注目を集める技術がある。仮想通貨の基幹技術として知られる「ブロックチェーン(※)」だ。
※ブロックチェーン:ネット上で共有される台帳(取引や履歴を記録する帳簿)を実現するための「分散型台帳技術」のひとつ。データが分散保存されるため、改ざん・削除がほぼ不可能という特徴がある。公正・透明・効率的にデータを保存・共有できる技術として注目されている
日本情報経済社会推進協会の常務理事・坂下哲也氏は説明する。
「ブロックチェーンは、少し前に起きたことを未来永劫にわたり保証し、価値を取引するための台帳技術。改ざんがほぼ不可能な状態で、効率的に共有・利用できる新たなデジタルインフラ技術と言い換えることもできるでしょう」
社会やビジネスに有用なデータは「未来の石油」と呼ばれ、パーソナルデータ(氏名や住所などの個人情報、生体情報、行動履歴、購買履歴など)やソーシャルデータ(SNS履歴)、実世界データ(センサーやカメラで現実空間から得られた情報)などがある。それらはこれまで各企業が個別、もしくは独占的に収集・保有することが常識となっていた。
しかし、改ざん不可能なブロックチェーン技術でデータを保存・共有すれば、行政や各企業がデータを横断的に利活用でき、新たな価値が生まれる。「データの民主化」を支える技術としてブロックチェーンは注目されているのだ。
「ブロックチェーンでデータの運用が可能になれば、個人にもメリットが大きい。ほんの一例ですが、免税手続きの効率化・簡素化や融資のための信用創造、教育履歴の管理を通じた入試などの免除、電子カルテの利用による医療レベルの向上が挙げられます」(坂下氏)
これまでデータ収集・利用の主導権を握ってきたのはGAFA(※)に代表されるような巨大IT企業だ。彼らは長年、スマホなどデジタル端末や各種サービスからユーザーのパーソナルデータを吸い上げ、自社の価値を引き上げるために利用してきた。具体的な金額に換算することは難しいが、収集された膨大なデータの価値はGAFAの時価総額の2~3割を占めているという試算もある。
※GAFA:グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字を取った造語。4社の時価総額は合計で約350兆円にも上る
世界のネット界の頂点に立つGAFAに対し、ブロックチェーンを使ったサービスを仕掛け、パーソナルデータに関する主導権を取り戻すことはできないか。現在、欧米ではそんな新たな「データ戦争」が起きている。欧米のIT事情に詳しい経営コンサルタントのクロサカタツヤ氏は言う。
「昨年頃からシリコンバレーなどではブロックチェーンが完全なバブル状態にある。その文脈のひとつとして『ポストGAFA』です。つまりGAFAによるデータ独占の外側で、新たなデータビジネスを始めようという起業家が現れ始めており、投資家の熱い視線が集まっているのです」
ちなみに5月に施行されたEUの新個人情報保護法「一般データ保護規則(GDPR※)」も、GAFAによるデータ独占から域内企業の利益を守るという意図がある。
※GDPR:5月から適用開始となった欧州経済領域の個人データ保護を目的とした規則。正式名称は「EU一般データ保護規則」。個人データの移転・処理についての要件が定められ、それを扱う企業および団体は同規則に準拠する必要がある
パーソナルデータを個人が売る時代が来る!?
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