小泉今日子にaikoの実家…石丸元章の実家グルメ探訪記
◆石丸元章が綴る「有名人の実家グルメ」奇譚
これまで、北は北海道で「大黒摩季の実家がパン屋をやっている」という噂を聞きつければ、その日のうちに飛行機で現地に乗り込んだものの、実は家族経営の町のベーカリーじゃなくて、札幌中に給食パンを卸している巨大製パンメーカーなのだった!みたいなものから、南は台湾で「ビビアン・スーのお父さんがやっている食堂」を訪ねれば、えらい山奥で、しかも出てきたのが小さな生のカエルをぶった切ってそのまま茹でた透明なスープで。「それって高砂族の文化が伝承した、ネイティブ系の台湾料理だし~!」みたいなものまで。さまざまな新発見を重ねつつ、かれこれ20年、各地の芸能人・有名人の実家系の飲食店を訪ね歩く“実家グルメ”を、わたくし実践してきました。押忍。
その心は――あのコの親の顔が見てみたい。あのアイドルが育った、実家の味を食べてみたい。ほら、芸能人有名人に限らずだけど、家族って、それぞれを映す鏡だったりしますでしょ。でもね、一口に実家が経営している飲食店(略して実家系)といっても、いろんなタイプのお店があるもので……。
例えば大阪・梅田のaikoのお父さんのスナックの店内は、ポスターやチラシや最新アルバムで飾られて、お客さんと共に娘の存在を楽しもう、というオープンスタンス全開! 一方で、娘の話をチラ乗せしたら「ここは俺の店だから」とはっきり拒絶された某ミニスカポリスの寿司屋もある。
印象深い一軒は、鈴木蘭々のお母さんの、杉並区だっけなあ。街道沿いにあるカウンターのラーメン&焼き鳥屋とか。サワーも飲めて夕方開店でね。「娘のイメージに合わないから」と、わが子に遠慮したちょっと淋しい理由で、娘のポスター類が貼ってなくて。でも、「そんなことないですよ」なんて話をしてるうちに、絵の話になって。蘭々ちゃんのお母さんて絵が趣味なのよ。「でも、ラーメン屋に絵を飾っても……」とあくまで控えめなお母さんは、ちっちゃな水槽をカウンター横のすぐ手の届くところに置いていてね。これならお客さんも見て楽しめるから、と。でも魚が入ってなくて、水草と石だけの水槽で。移り変わりが見たくて、ついつい、また行ってしまった。今考えると「あのときが、お母さん方面から蘭々ちゃんにアタックする最初で最後のチャンスだったかも!」とかそういう妄想気味の後悔も、実家系グルメの楽しさのひとつなんです。現在、お店は娘の活躍により円満閉店。
ほかに印象深いといえば、キョンキョン家のお好み焼き屋にも驚いた。本厚木の駅前でタクシーに乗って「小泉今日子の……」と名前を告げた途端、「はいあそこね!」と店の前まで案内されたのは、後にも先にもあれっきりだ。やっぱ小泉今日子は、本当のスターなんだね。で、キョンキョンママのオススメは、なんつっても、ママ手作りの自家製キムチとチヂミなの。それが、キョンキョンが子供のころから親しんできた、おふくろの味なんだろうね。うまかった! そういえば、ジャニーズ事務所の某タレントのお母さんは、「事務所が厳しくて息子の写真を自由に飾ることができないのよ」と苦笑いしてた。気持ちわかるよね。自分の子供の写真なのに。亀戸にも、誰か忘れたけど、見事な八百屋の実家があって。そこでもおんなじようなこと言ってたな。ポスター貼ると怒られちゃう。みたいな。振り返れば、いずれも楽しい思い出だけど、まだ終わったわけではなくて。再来週には、静岡に行く。元光GENJIの諸星和己さんのお母さんの店を目指します。ステイチューン。
【石丸元章氏】
おなじみ本誌連載「これでいいのだ!」の構成を担当。新訳を手がけた『ヘルズエンジェルズ』(ハンター・S・トンプソン著)がリトル・モアより3月5日に発売予定
取材・文・撮影/永谷正樹 取材・文/古澤誠一郎 黒田知道 田幸和歌子 安田はつね(本誌) 撮影/菊竹 規 山田耕司(本誌)
― 有名人の家族が経営する飲食店グルメガイド【10】 ―
『ヘルズエンジェルズ』 ハンター・S・トンプソン伝説のデビュー作 |
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