エンタメ

松本人志、マツコ、指原…同じ有名人コメントが溢れるネット記事は、いつまで続くのか

テレビが声を上げれば、一気に沈静化する可能性も

 ただ、この状況に転機が訪れるとすれば、それは「テレビ局など制作側が声を上げること」だと中川氏は指摘する。 「テレビウォッチ側はあくまで『引用』というスタンスですが、ほとんど番組を書き起こしただけの記事で商売するとなると話は違ってきます。予算を掛けて、タレントをブッキングして、徹夜で編集して……そうした手間と知恵を絞ってテレビ局が作ったコンテンツにフリーライドしているだけですから。  もしコンテンツ制作側が使用料を求めて訴えたら、潮目ががらりと変わる可能性があります。例えば、『月間1000万PV以上のメディアがテレビウォッチで記事を作った場合は営利活動とみなして使用料を請求する』といった形になれば、コストに見合わないとしてネットニュースがテレビウォッチから手を引くことになるでしょう」

ロンブー田村淳の記事が激減したワケ

 ’17年にはロンドンブーツ1号2号の田村淳が「無断転載禁止」と表示していたのにもかかわらずツイートを記事化されたとして疑問を投げかけた。 「それだけで田村さんのツイートが記事化されることが激減しましたからね。『淳は名指しでオレらを追い込んでくるかも……。ファンからも抗議が来るかも……』なんて思ったのかもしれません。法律上は、引用や報道の要件を満たしていれば問題ないのですが、手間を掛けずにテレビ番組やツイートをメインに記事化するのはグレー。リスクがあると認知させるだけでも、十分な抑止力になります」  そして、こうした流れは、ネットニュースの制作現場からも歓迎されるのではと中川氏。 「会社は痛手でしょうが、そもそもテレビウォッチなんて『PVが稼げる』という以外に何の意味もない、ジャーナリズムの欠片もない記事ですから、現場は疲弊し切っているんです。何のモチベーションもないので、『もう書かなくていい』となったらすぐにでも投げ捨てるでしょうね。  嘘かまことかはわかりませんが、テレビウォッチが生まれたきっかけは、ネットニュース編集者の家族の内職のためだったとか。その程度の記事が、今やニュースサイトのメインコンテンツになっていること自体が異常なんです」  連綿とテレビウォッチの制作に追われて現場が疲弊し、多様なチャレンジが失われているリスクも当然あるだろう。果たしてこのテレビウォッチブームがどういう帰結を迎えるのか、注目していきたい。〈取材・文/日刊SPA!取材班〉 ●ネットニュース編集者・中川淳一郎氏 博報堂を経て、ライター、その後ネットニュースサイトの編集者に。現在はネットでの情報発信のプランニング業務などを行う。近著に適菜収との共著『博愛のすすめ』(講談社)
1
2
おすすめ記事