「第四次 印パ戦争」の核リスク 空爆40人死亡の報復で戦闘機撃墜
もちろん、核の先制使用はリスクが高い。現在のNPT(核拡散防止条約)体制の下では、到底、受け入れられないだろう。だが、過去にその使用が真剣に検討されたことがあったのも紛れもない事実なのだ。久保田氏が続ける。
「’01~’08年にパキスタンの大統領を務めたペルベズ・ムシャラフ氏は、’02年にインドへの核の先制使用を真剣に検討していたことを後に明かしています。きっかけは、’01年に起きたインド国会襲撃事件で、印パ双方の軍100万人が国境付近に動員されるなど緊張がピークに達していた頃のことです。
シャリーフ元首相も血気盛んな青年将校を怖れていたように、国内から強い突き上げがあればリスクは高まるでしょうね。パキスタンが最初の核実験を行った際、首都のイスラマバードや大都市カラチでは、核実験成功の知らせを聞いた人々がみな街中に出て、踊り狂って喜んでいました。
核の恐ろしさを知らないので仕方ないが、インドに対抗できる強力な新兵器を手に入れたことを素朴に喜んでいたわけです。世論の後押しがあれば、軍部も核を使用しやすくなる。市民の狂騒は、そういう怖さも孕んでいるのです」
実は、インドでは3か月以内に総選挙が控えている。当初、モディ首相率いる与党・インド人民党には楽勝ムードが漂っていたが、ここにきて「大混戦」との見通しが強まっているのだ。内政の混乱が印パ関係にどのような影響を及ぼすのか? 前出の堀本氏が話す。
「選挙を意識して、モディ首相が政権浮揚のために軍事行動に踏み切ったと見るべきです。一方、パキスタンのイムラン・カーン首相も昨年8月に就任したばかりで、政権の前途のために弱腰ではいられない。ロシアのプーチン大統領のクリミア併合を見ればわかるように、政権浮揚のために強硬姿勢に出るのは常套手段ですから。
加えて、長らく核の先行不使用のスタンスを取ってきたインドが、モディ政権になってから政権内で核の先制攻撃オプションを主張する声が大きくなっているのは気がかりです。和平に向けた『仲裁役』がいない点も暴発リスクを高めており、’90年代以降、印パ両国と良好な距離を取ってきた米国も、今は米国第一主義を掲げているため期待できない。
パキスタンでは核の使用権限は陸軍が握っているため軍が暴走する可能性も否めず、当分、印パ間の緊張状態は続くとみていい」
「対話」への道は、トップ会談を決裂した米朝関係以上に、遠く険しいイバラの道になるかもしれない。
▼米朝首脳会談後の会見でトランプ大統領も言及
「現在、(印パ間で)起きている問題がこれ以上発展しないよう食い止めたい……。近く紛争が終結することを期待している」。米国のトランプ大統領は、米朝トップ会談が“決裂”したことへの恨み節とともに、世界が抱える「もう一つの核リスク」についてこう見通しを語った。今後、米国が仲裁に乗り出すかが注目される
取材・文/週刊SPA!編集部 写真/AFP/時事
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