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群馬県・前橋中心街が、今なぜかアーティストだらけの強烈な個性の街に

「街のぶらぶらおじさん」たちが前橋をアートの街にしていた

 そこで、自らを「街のぶらぶらおじさん」と称し、アーティスト支援の仕事などをしている福西敏宏さん(55歳)に聞いてみると「前橋はもともと養蚕産業で豊かな街でした。豊かな人々が文化や芸術を楽しんできたという風土があり、今もアートに理解のある伝統が残っているのだと思います」と教えてくれた。だが、特にこれまで見てきたような現代アートの分野では、福西さんのような支援者の存在が大きな役割を果たしているようだ。  福西さん自身も東京から前橋に移住してから、アートに触れるようになったというが、アーツ前橋が外国人のアーティトを招聘したときの世話役などを担ってきた。そして、海外や東京などから突然アーティストやアート関係者が訪れたときにも、街の案内や前橋在住のアーティストを紹介したりといった活動を熱心に行っているという。 「東京での仕事に行き詰まって、たまたま知り合いの教授が群馬大学にいたので、会社を辞めて群馬大学の大学院で社会学を勉強することにしたんです。最初は卒業したらとっとと東京に帰ろうと思っていたのですが、アートに無関係だったにも関わらずアーツ前橋の立ち上げに偶然関わり、そのアーティスト・イン・レジデンス(AIR)の事業をコーディネーターとして手伝うことになりました。  世界各国から来るアーティストたちのリサーチに付き合っているうちに、ありふれた地方都市だと思っていた前橋が不思議な魅力を放ち始めたんです。その面白さを伝えたくて、AIRにずっと関わりながら、アーティストたちと市の観光パンフレットを作ったり、前橋に初めてきたという人がいたら、進んで案内役を買って出たりしています。気がつけば、前橋に来てはや10年。でも最近はAIRを通じて仲良くなったアーティストたちの紹介で、海外のアート関係の仕事の手伝いもするようになって、なんだか不思議でよくわからない展開になってきました。  昔って、なんだか知らないけど、街をぶらついているよくわからないおじさんっていたじゃないですか。何やっているかわからないけど、聞けばその街のいろんなことを教えてくれたり、ある種の潤滑油みたいな役割を果たしていた人たちが。なので、『街のぶらぶらおじさん』と自称して、その役割は続けていこうと思っているんですよね」  実際、我々も福西さんには何度もお世話になり、前橋のさまざまなところを案内していただいた。そして、福西さんのような「ぶらぶらおじさん」であろうとする人たちが、ほかに何人かいるそうだ。  一方、この前橋中心街は文化施設ばかりではなく、スナックや飲食店も数多くある歓楽街の要素も強いのだが、不思議なことにこのエリアにはコンビニやファストフードなどのチェーン店が見当たらない(現在、「中心街」とこの原稿で呼んでいるエリアのすぐ外の大通り沿いに大手コンビニチェーンが新店舗を建設中とのことだが)。何か条例などで規制でもしているのだろうか、と福西さんに聞いたところ、「何年か前にKFCが撤退した」ということなので、別にチェーン店を拒んでいるわけではなさそうだ。  やたらと個性豊かなアーティストやその支援者が街を面白くしようとしている前橋。なんとも不思議な魅力のある街であることは間違いない。 取材・文・写真/織田曜一郎(週刊SPA!) 取材/茂木響平 通訳/小高麻衣子
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※ジル・スタッサールの個展が群馬県前橋市で開催中
ya-gins vol.33 Gilles Stassart「Genealogy」
会場:ya-gins
住所:〒371-0022 群馬県前橋市千代田町3-9-2弁天通りアーケード内
会期:2019年4月28日まで
オープン毎週 金・土・日曜
時間:13:00-20:00
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