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「松井府知事ならバンクシー、消すんちゃう」 大阪のバンクシー作品探しルポ<グラフィティの諸問題を巡る現役ライター・VERYONEとの対話>第2回

 1月16日に東京都がバンクシーの作品を「保護」したことを巡り、日本でも「ただの落書きで、違法行為ではないか」「いや、ストリート・アートだ」といった議論が巻き起こるようになった。また、1月25日頃にはパリでバンクシーが少女の絵を描いた扉が盗まれるなど、バンクシーの名前が日々、世間を騒がせている。だが、現場のグラフィティ・アーティトの一部はこの騒動を「バカバカしい」と思っているこのシリーズでは現役グラフィティ・ライターVERYONEと、門外漢としてグラフィティを知識なく撮影してきた記者の奇妙な対話を通じ、「グラフィティとは何か?」「違法性をどう考えるか?」「それはアートなのか?」「アートがグラフィティを回収しようとすることをストリートの人々はどう考えているのか?」を探っていく(全7回予定)。

 2019年1月某日。私は大阪にいた。目的は「今も残るというバンクシー(BANKSY)の『作品』」を写真に収めて、速報記事を出すこと。その前日に、大阪のグラフィティ事情に詳しい美術関係者、さらには現役グラフィティ・ライターのヴェリーさん(VERYONE)から、「ここにある」「ここにあった」という「確定情報」をもらっていた。

 だが、せっかく大阪に行くのであれば、自分でも探してみたい。そりゃあ、詳しい人たちから見たら「そこにはないよ」と笑われるかもしれないが、万が一、彼らが発見できていないバンクシー「作品」を見つけたら、スクープになるじゃないか。

 ヴェリーさんからの情報は、もう「そこにある(あった)」ことは間違いないだろう。だったら、ヴェリーさんからの情報は後回しにして、事情通氏からの「あそこで見かけたけどなぁ。今はあるかどうか」という情報を得た某エリアで「発見」してやろう。もしかしたら、ヴェリーさんも「あんなところにあったのか」なんてことになるかもしれない。

 ということで、朝6時の新幹線に乗り、朝9時半から12時頃まで、某エリアでしらみ潰しに「落書き」「ステッカー」「グラフィティ」の写真を撮りまくった。

バンクシーの「作品」探しをしながら撮影 その1

バンクシーの「作品」探しをしながら撮影 その2

バンクシーの「作品」探しをしながら撮影 その3

バンクシーの「作品」探しをしながら撮影 その4

 結論から言うと、私がバンクシーの「作品」を発見することはなかった。

 そのすべての写真など、とても載せられないし載せる意味もないが、約2時間半、あるエリア(と言ってもごく狭いエリアなのだ)を歩き回り、

・落書き266点
・ステッカー(またはステッカーのようなもの)160点
・消された落書きの痕跡66点


 を撮影した。第1回でも書いたが、「秘めたる趣味」としてこれらの「落書き」「ステッカー」「グラフィティ」を撮影し始める1年前までは、街を歩いていてもこれらが私の目には入ってこなかった。だが、気づけば、特に繁華街には本当にうんざりするほど、こういうものがある。そして、この「グラフィティ」に対して、しっかりと対策ができている街、そうじゃない街も見分けられるようになった。

 経験上、駅の周辺を歩いていて、この手の「落書き」がすぐに見当たらない場所は、しっかりと対策をしているようだ。某地方都市では「アンチグラフティー加工」を街灯に施している、という発見もあった。やはり、自治体レベルでも「グラフィティ」にはかなり苦慮していることが窺われる。

某地方都市で撮影した「アンチグラフティー加工」を施された街頭 その1

某地方都市で撮影した「アンチグラフティー加工」を施された街頭 その2

 誤解してほしくないのだが、こういう記事を書くと、あたかも「迷惑行為・違法行為を助長しているのか」と思われかねない危険性は重々承知している。なので、このシリーズでは、今回、取材対象になった「大阪」および「大阪市」という大きなくくりでは地名を出しているが、写真もその他の場所で撮影した写真も、なるべくそのエリアが特定できないだろうものを紹介しているつもりだ。

 ともあれ、これらの「落書き」に苦慮している住民の皆さんの気持ちがすごくわかる警告文も今回、撮影できた。「警告 すべてのかべに落書をしてわいけません。落書をした人に天罰が下ります」。本当に、これは正論だ。

「落書き」を迷惑に思っている方の心の叫びだろう

 そして、このエリアでも数多くの「落書きを消した痕跡」が確認され、「バンクシーの『作品』も消されたんだろうな」と判断し、そのエリアをあとにした。

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ヴェリーさんに案内され、グラフィティ・ライターの生態を垣間見る

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