87歳の池袋暴走事故。高齢ドライバー問題に意外な解決策がある
4月19日昼、東京・池袋で最悪の交通事故が発生した。87歳の男性が運転する乗用車が暴走し、次々と歩行者をはねた上にゴミ収集車に激突したのだ。通りすがりの母子が亡くなり、「高齢者による自動車の運転」が社会問題として再び注目されるようになった。
報道によれば、事故を起こした男性は以前「運転をやめる」と周囲に話したこともあるという。
高齢者は運転免許を返納すべきなのか——。話は一筋縄ではいかない。免許を返納したら、他に頼れる交通手段がなくなってしまう人も存在する。自家用車に代わるものがない、というのが問題を複雑にしていると言えよう。
そこで解決の糸口になるかも知れないと期待されているのが、「ライドシェア」の導入である。
ライドシェアとは、スマホアプリを使った配車サービスである(例えばUber=ウーバー)。サービス運営者と契約したドライバーは、オペレーションに従って利用者のいる位置へ向かう。スマホのGPS機能と連携しているから、迷うことは絶対にない。またこの時、利用者は降車地点も指定している。そこから利用料金が事前に算出されるという仕組みだ。
ライドシェアのドライバーは、タクシー営業に必須の二種免許取得者ではない。空いた時間に働きたいと考える、ごく普通の市民だ。従って既存のタクシー業界はライドシェアを「白タクサービス」と見なし、導入に強く反発する。しかし、そんなライドシェアが各国の交通事情を劇的に進化させているのも事実なのだ。
ライドシェアの利点として、まずは「料金が安い」ということが挙げられる。タクシー営業許可を取得していない車両を使うのだから、そのぶんだけでも大幅なコストカットが望める。さらにAI(人工知能)も駆使した効率的なオペレーションシステムにより、運行上のロスもなくなる。
そして、ライドシェアは利用者がドライバーに対して評価点をつけることが可能だ。車内が散らかっていたり、ドライバーが無礼な態度を取ったり、煙草臭かったりということはすべてマイナス評価されてしまう。逆に、常日頃から利用者のことを最優先にしているドライバーは高評価される。すると、必然的に質のいいドライバーだけが残っていくという流れになる。
そのため、海外ではタクシーよりもライドシェアのほうが信頼されているというケースが多い。
海外のライドシェア導入事例はどうなのか。こんな話がある。
「ライドシェアが認められていないアジアの国は、北朝鮮と日本だけ」
だが、内外の陸運ビジネスに精通した人からすれば、この文言を笑うことはできない。なぜなら、北朝鮮と同じ共産主義国家であるはずの中国やベトナム、ラオスにはすでにライドシェアサービスが存在するからだ。
アジアで最も普及しているライドシェアサービスは、マレーシア発の「Grab」である。従来のタクシーよりも低料金で運行する仕組みはもちろん、チャイルドシート設置車両を呼べるサービスや飲食店と提携したデリバリーサービス、そしてそれらの利用を円滑にする電子決済サービスまで提供している。
そのようなライドシェアサービスに、日本の既存タクシー業界が反発して大規模なデモを起こすということもあった。しかしそれは、利用者からして見れば「不便で割高なタクシーを押し付けられる」ということに他ならない。ライドシェアに代わる便利なオンラインプラットフォームを開発できない既存タクシー業界は、むしろ各国市民の怒りを買ってしまった。
インドネシアではタクシードライバーがライドシェアドライバーを集団リンチする動画が拡散し、市民の間で「タクシーに乗るのはやめよう!」という呼びかけが起こったほどである。
高齢ドライバー問題を解消する有力手段「ライドシェア」って何?
ドライバーが評価される仕組み
取り残されているのは日本と北朝鮮ぐらい
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