更新日:2019年06月14日 18:02
仕事

今年の5月病は深刻? 退職代行に殺到する「会社辞めたい」コールの衝撃中身

正社員と契約社員で異なる“退職のルール”

嵩原「確かに正社員と契約社員は退職のルールが異なります。正社員なら法的には会社に対して退職の申出はいつでもできます。しかし契約社員は、契約期間内に退職したいと申し出ることは原則として不可能です」 相談者「ああ、やっぱりダメなんですね……」 嵩原「でも、聞いてください。体調、精神的疾患などを理由とする、『どうしても業務を続けられないような不調』が起こった場合、契約期間内でも退職は可能です。これは民法第628条を見れば明らかなんです」 相談者「でも以前、その上司から『もし契約期間中に辞めたら、損害賠償で訴えるぞ!』とも脅されました。自信たっぷりに言ってきたので、それが怖くて」

「損害賠償で訴える」会社の脅し文句は正当か?

嵩原「私の元に相談に来る方の約半数が、会社からの損害賠償請求を心配してきます。でも、法律に従って会社を辞めれば、会社に対して損害賠償をする責任は発生しません。これは法律で決まっている事実です」 相談者「そうなんですね! ちょっと安心しました」 嵩原「万が一、損害賠償で訴えてきた場合でも、私のほうで対応します。退職代行の相談に乗るようになって気づいたのですが、『損害賠償リスク』を気にする方があまりに多すぎる。逆に言うと、企業が「損害賠償するぞ!」を脅し文句にしているのでしょうね。故意に会社に損害を与えた場合など一部の例外を除けば、会社が従業員を損害賠償で訴えてお金を巻き上げることはできません。 理不尽なパワハラで心身ともに限界を超えるまで我慢することはありません。心身に悪影響が出ているようですし、今の会社を辞めて生活を立て直してみることを薦めます」  * * *  このようなやりとりを経て依頼を受けた嵩原弁護士は、相談者の勤務先と交渉。話し合いの末、スムーズに退職が決まったという。 「雇用主も法律を理解していないことが多いんです。また、当事者同士で話し合うとヒートアップしがちなので、第三者を挟むことで落ち着いた話ができる。もちろん、企業側の言い分にも耳を傾けます。ただ話していくうちに『いたずらに長引かせても、双方骨が折れるだけ』と気づくことが多い。はじめは喧嘩腰だった交渉も終盤は和やかになるものですよ」(嵩原弁護士)  パワハラによる恐怖から自ら退職を切り出したくても、切り出せない。また逃げる気力すら絞り出せない。そんなときにプロによる退職代行サービスを利用するのは、決して甘えではない。社畜ではなく人として、生き延びるための戦略なのだ。 フォーゲル綜合法律事務所】 嵩原安三郎氏。’70年沖縄県生まれ。京都大学卒業後、’99年に弁護士登録。情報商材や副業詐欺など悪徳商法案件を数多く手がけるスペシャリスト 取材・文/アケミン 構成/浜田盛太郎
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