ライフ

見知らぬ男に中指を立てられた「文京区白山」の夜――清野とおる×パリッコ

赤提灯に引き寄せられた居酒屋で”事件”

 ふらふらと怪しい足取りの女性(?)に導かれ、自分たちの向かっている方角もわからずに……。
酒場人

酒が安すぎ! が、サーロインステーキとの組み合わせにひるんで見送る

酒場人

「これは洗濯物ではなく”自己主張“ですね」と清野氏

酒場人

お花の上にごみをすてる輩が存在すると思うと、「指ヶ谷町」という地名も不気味に思えてくる

 次に入店したのは、とある居酒屋。店名は伏せる。雰囲気の良い佇まいと、遠くからでも主張する赤提灯に全員が引き寄せられた。感じの良い大将に導かれて小綺麗な座敷に上がり込み、メニューを検討する。 ――清野さん、好きなお酒の銘柄ってありますか? 清野:日本酒は「吉田蔵」、焼酎なら「七田」ですね。お、ここ七田があるじゃないですか! これにしよう。 ――いいですね! おでんも美味しそうですよ。ここは”白いネタオンリー”で注文するなんてどうですか? 清野:最高ですね~。  楽しい。  しかしわずか数分後、はんぺん、大根、玉子など真っ白なネタだけが乗ったおでんの皿を前に、我々の口数は減っていた。メモ用紙を1枚ちぎって何事か書き込み、スッとこちらへよこしてくれた清野氏。そこには、 「俺の知ってる『七田』じゃない」  とだけ書かれていた。すかさず「おでん、味がしないです」と書き込み返す。  断じて店が悪いのではない。きっとなんらかの波長が、今日の自分たちと合っていないのだ。そんな時はここにしがみついても意味がない。お会計をし、次の酒場を探そう。

あきらめない者を酒の神は見捨てない

 あてもなく歩いていたら「千石」駅にたどり着いた。すでに白山ではないが、もはやどうでもいい。  突然、清野氏が「あ、ちょっと待っててください!」と言って何か探し始める。なくし物でもしてしまったのだろうか?
酒場人

「ほらほら『1000円』と『石』で『千石』!」

 唐突な感じがすごく面白くて大笑いしたが、このあと「俺、酔うとたまにこういうことやっちゃうんですよね……忘れてください」とつぶやいていたのがさらに印象に残った。 「ここぞ!」という決め手に欠け、1時間以上も街をさまよう。早く次の一杯は飲みたいが、後悔はしたくない。結果おちいる悪循環。が、こうした街歩きにおいて、あきらめない者を酒の神は見捨てないのであった。それは巣鴨の大鳥様に手を合わせた直後のこと――。
酒場人

「あれ? あんなところに赤提灯が……」

酒場人

「ここしかない!」

 巣鴨の居酒屋「一休(ひとやすみ)」。大鳥様に導かれたような感覚だった。カラリと戸を開け入店すると、明るく、ほわっと暖かい店内に心がやわらぐ。席はL字のカウンターのみで10程度。優しくて世話好きそうな女将さんと、真面目そうなタイ人の女性店員さん。常連さんがひとり静かに飲まれており、実に幸せな空気感だ。レモンサワーで喉を潤し、まずは、くじらのすじをいただく。
酒場人

くじらのすじ

 牛すじにも似て、臭みなく、旨味たっぷりの歯ごたえある身に、ポン酢の爽やかさが際立ち、驚くほどうまい! 思わずあとでおかわりした。  自家製「黒ニンニク」のプルーンのような甘みが歩き疲れた体を癒してくれ、銀杏に秋の訪れを感じる。シャキシャキの身に甘味を閉じ込めた「下仁田ねぎヌタ」は作りたてで、まだほんのりと温かく、ちょっと不思議だけどこれまた絶品。
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