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アメリカがずっと日本を守ってくれる、と思う人達の幼稚さ

国同士の約束に「絶対」はない

 条約など、国同士の約束に「絶対」はありません。評論家の江崎道朗氏は著書「知りたくないではすまされない」で同盟軍が見捨てられる場合の例をあげています。ベトナム戦争末期に米国は同盟国「南ベトナム」に北ベトナムが軍事侵攻してきた際には、武力介入を約束しました。  しかし、2年後に北ベトナムが軍事侵攻した時、米国は武力介入せず、南ベトナムは滅びました。米国は軍事同盟を破り、同盟国「南ベトナム」を見捨てました。米国は同盟国を見捨てることがあるのです。  イザという時に必ず米軍が期待通りに動くと妄信するのは浅はかです。日米安保条約や日米同盟があっても、日本は十分な防衛力を持たなければなりません。米国は何度も日本に必要な自衛力を整えるようにと言っています。米国だけではアジアの平和を守ることはできないというメッセージも出しています。  パートナーとして失格の烙印を押されたらどうなるかを想像してください。日米安保条約の第10条に「この条約が10年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意志を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後1年で終了する」とあります。すでに10年以上経過していますが、日米双方が日米安保を継続している状態です。日米安保が通告後1年で条約を終了できるものだということは知っておく方がいいでしょう。

米軍はいつまで日米同盟への依存を許してくれるのか


 日本の頼みの綱である日米安保条約には、日米双方が「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる」という条項があります。日本も軍事力を維持し発展させる義務を負っています。  米軍が戦争を開始するには「戦争制限法」という法律があり、米国議会への説明、承認が必要です。また、議会が戦争の継続を認めない場合、大統領は“即座”に軍事行動を中止し、軍を撤退させることが義務付けられています。日米安保があっても議会の反対があれば大統領は武力行使できない場合があります。  米軍への従属を警戒する報道が多いようですが、逆です。米軍がいつまで日米安保・日米同盟への依存を許してくれるのかを心配すべきです。日米安保に頼り切っている我が国は継続して戦う能力を軽視しています。弾薬や燃料の備蓄、戦いが長引いた時の交代要員や物資の輸送能力等にはほとんど予算をかけていません。日米安保で米軍が助けに来るまでの僅かな期間を耐えきればよいと考えています。  「最低限の軍事力しか持たないこと」が我が国の原則です。防衛予算を増やし備蓄、輸送、人員等のロジスティクスを考えなおし、自衛隊だけでも迫りくる危機に対処できるように自立すべきです。同盟国でも見捨てられることがあることを知っておくべきです。
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

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