雑学

自衛隊員は「タダ飯」が食える職業という誤解

小笠原理恵「自衛隊ができない100のこと 56」

海上自衛隊のカレーはもともと金曜ではなかった


海上自衛隊

海上自衛隊Facebookより

 災害派遣でふるまわれる自衛隊の作る食事は被災地の人の心のよりどころになります。自衛隊では献立を作り、調理指導を行う栄養士や実際の食事をつくる糧食勤務員(陸自)・給養員(海自)というような係がいます。自衛隊の料理は大鍋で大量につくるため男性が調理をすることが多いようです。陸自はどこにでも異動できるように大型の炊事車があります。野外水具と呼ばれる車ではかなり強い火力で調理ができます。長い訓練や演習、海外派遣でも温かくおいしい食事は人の心を和ませてくれるものです。

 毎年、横須賀で行われる海上自衛隊と海軍カレーが同時に食べられる「よこすかカレーフェスティバル」は長蛇の列ができ大人気です。海上自衛隊は長い航海で曜日感覚がなくならないように、毎週金曜日の昼食にはカレーが出ます。「金曜日のカレー」を海軍の伝統と誤解していましたが、「昔は土曜日の午後から休みだったために土曜日にカレーを作っていたものが、土曜がまるまる休みとなったため金曜日に変わったのだ」と河野元統幕長がNHKの取材に答えていました。海軍カレーが土曜だったことはちょっとした「誤解」です。その程度の小さな「誤解」は気になりませんが、次の誤解はちょっと重要です。

大多数の国々では軍人の糧食費は国が賄うのが当然


 自衛隊は営内に居住していれば決まった時間に朝昼晩と食事が出ます。民間企業食堂の食事はその代金を目に見える形で支払っていますが、自衛隊員は無料で食事をしていると多くの人が考えています。しかし、以前この連載でレポートしたとおり、国会の記録を見ると、自衛隊員の給与体系を作る段階で、糧食費や隊舎の費用などを先に引かれていることがわかりました。遥か昔の給料を決める段階で、先取りされていたのです。だから、タダで3度のメシを食べられるお得な職業ではありませんでした。

 昭和45年の国会記録によると、自衛隊の給料体系は、自衛隊発足時に公安職の給料から3食の糧食費と隊舎等の経費相当額を差し引いたものに、残業手当や休日手当が全く支払われない分として、毎月21時間分の超過勤務手当分を加算して作られたものです。国家公務員特別職という残業手当も休日手当も出ない自衛隊の給与体系はこの時代の論理からほとんど変わらず運用されています。

自衛隊

陸上自衛隊Facebookより

 我が国は自衛隊員にタダで食事をさせるほど甘い国ではありません。大多数の国々ではそんなセコいことをせず、軍人の糧食費は国が賄うことが当然と考えているようです。しかし悲しいかな、自衛隊を「軍」と認めてはいけない現行憲法がある我が国では、自衛隊は国を護るためにしっかりと国防の任を担うというよりも、最低限の予算内でできる範囲内のことだけすればいいという感覚でずっと運用されてきました。だから何もかもが足らないままにされています。

 公安職としてもらえるはずだった金額から、食費を国に先取されていますので税金で食わせてもらっているなどと卑屈に考える必要はどこにもありません。自分の給料で払っていると考え、ガッツリしっかり食べていただきたいと思います。

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自衛隊ではなぜ食事が出るのか?

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