更新日:2023年03月28日 09:53
恋愛・結婚

妻からのDVに悩む夫が急増「お父さんは汚いから触っちゃダメ!」

DVがあっても子供の親権は妻にいくことが多い

 この国の法律にはまるで正義がないと憤慨するのはまだ早い。最も厄介なのが、子供がいる場合の親権の行方である。 「女性の中には、子供には優しいけど、夫には暴力を振るうという人もいます。夫に対してよほどの暴力があったり、子供と無理心中を図ろうとするケースでもなければ、親権は母親にいく可能性が高い。いずれにせよ、基本的に離婚裁判では男性が不利なので、裁判官を納得させられるだけの証拠をとっておく必要があります」(森氏)  男性が女性から圧迫を受けていると主張するには、録音や録画などの確実な証拠が不可欠だという。  ここで実際に妻からのDVに悩む男性の事例を2つ紹介しよう。結婚4年目、妻と3歳の娘の3人で東京に暮らす大崎浩一さん(仮名・39歳)は、肩身が狭い。妻の両親から譲渡されたマンション住まいだからだ。 「引っ越してから妻が生まれ育った家のローカルルールを知り、その厳守を徹底させられました。ドアの開閉や洗面所の使い方、家ににおいが付くからと酒とタバコは帰宅の1時間前まで……と。守らないと癇癪を起こして夜中まで僕を怒鳴り続けることもありますし、掃除機を投げつけられたこともあります。でも、一番ツラかったのは、私に飛びついた娘に向かって、『お父さんは汚いんだから、触っちゃダメでしょ!』と、娘を叱る形で僕を汚いもの扱いしたことです」  妻の言葉にショックを受けた大崎さんは弁護士に離婚を相談したが、住む場所はなくなり、親権を取られた上に毎月養育費も払わなければならないと知り、泣く泣く今も結婚生活を継続中だ。  4年前に買った神奈川の自宅で専業主婦の妻と娘の3人で暮らす山内健一さん(仮名・44歳)は、キレる妻に苦しめられている。 「とにかく子供が最優先で、自分の思い通りに私がしないとキレまくるんです。少しでも反論しようものなら大変。『子供のことがかわいくないのか!』って叫びながらコップを投げつけられたり、汚れているといって私のスーツを捨てたこともありましたね……」  さすがに娘に危害を加えられたらたまらないと弁護士に相談したが、子供へのDVがなければ親権は母親にいく可能性が高いと告げられ、離婚に踏み切れずにいるという。こうした事例は氷山の一角にすぎないのだ。

自分のことを加害者と思い込むDV洗脳状態

 夫を追い込む妻の心理状態は、いったいどうなっているのか。DV加害者の更生に20年以上取り組んでいるメンタルサービスセンター代表の草柳和之氏によれば、DVを働く人間の傾向に男女の差はほとんどないらしい。 「DVを働く人には、相手を牛耳ろうとか、自分の思い通りにさせようといった支配欲が見られます。その背景には、発達障害、うつ病、依存症などが関係していることも。加害者が男性であろうが女性であろうがそれは同じといえます」  一方、DV被害を受けやすい人間にも一定の傾向があるらしい。 「DV被害者側は、自分が至らないから悪いんだと、いわば洗脳されてしまっている状態。お前はダメな人間だと言われ続けることで感覚が麻痺してしまい、自分がDVを受けていることに気づかないケースが多いのです」(草柳氏)  では、こうした状態から脱するためにはどのような取り組みが必要なのだろうか。 「まずはしっかり睡眠と食事を取る。DVの渦中では、そういう健康の基本が疎かになりがち。自分を大切に扱うことで、相手が自分を大切にしていないことに段々と気づくのです。別居や離婚など夫婦の暮らし方を考える際に、専門家からの助言もぜひ求めてほしいです」(同)  DVは人間の尊厳を踏みにじる行為にほかならず、その洗脳を自分で解かない限り、暴力の呪縛からは逃れられないのだ。 【森 公任氏】 森法律事務所代表弁護士。離婚やDV問題を多く扱う。メディア出演多数。共著に『一番よくわかる 離婚の準備・手続き・生活設計』(西東社)など 【草柳和之氏】 心理カウンセラー。メンタルサービスセンター代表・カウンセラー。大東文化大学非常勤講師。日本で初めてDV加害者更生プログラムに取り組む第一人者。著書多数 取材・文/岡田光雄・松嶋千春・野中ツトム(清談社) ― 世にも恐ろしい妻のDV ―
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