<純烈物語>純烈のリーダーから見た騒動の裏側<第1回>
健康センターということで、浴衣姿で観覧するオーディエンスもたくさんいる。最前列ド真ん中にあぐらをかいて陣取る青年を見つけた小田井は「男のパンツなんか見たくねえから早くしまえよ!」といじり、ドッと沸かせる。聞けば常連ファンとして知られる存在とのこと。だからメンバーもネタにしやすい。
「よくいじってくれるんで、自分としては嬉しいですし、みんなも楽しんでくれていることで僕も楽しい。純烈を見始めたのは去年の4月、友達に連れてこられてだったんですけど、最初は撮影会に参加するのが楽しかった。でも、曲も耳馴染みがよくてあとから好きになりました。ムード歌謡って日本人だなあっていう感じがするじゃないですか。あとは、身近で触れ合えるのがいい。1列目を押さえられたのは友達が頑張って、famiポートの前でスタンバって発売が始まった瞬間に取るというやり方で協力してくれました」
25歳というその青年に純烈の魅力は? と聞くと「色気」と答えた。女性アイドルやロックバンドを追いかけた時期もあったが、その過程を経てたどり着いたのがムード歌謡グループだった。
歌詞の世界観から伝わる色気。そして男が見てカッコいいと思えるビジュアルとたたずまい。自分がいじられることでライブが盛り上がるのであれば、いくらでも股を開いてパンツを見せると言わんばかりに彼は笑った。
この日、何人かのファンに聞いて回ったところ、男女問わず総じて「色気」の二文字を口にしていた。飾ることなくぶっちゃけまくるMCと、しっとりと人の心を歌いあげる唄は落語でいうところの“緊張と緩和”のようなものであり、エンターテインメントにおいて心を揺さぶる基本フォーマットである。
本来は緊張を満たしたあとに緩和が来ることで笑いが生じるわけだが、逆も真なりでくだけた人が一転し真摯になると、グッと来てしまう。純烈という“作品”は、それが絶妙なのだ。そんな色気に導かれたファンに対し、酒井はなんの前触れもなくけっこう重要な告知をサラッと口にした。
「本日より純烈のファンの皆さんをこう呼びたいと思います。女性は『純子』、男性は『烈男』です!」
次の瞬間、客席の一角から控えめながらも「キャーッ!」という悲鳴があがった。
(つづく)※この連載は毎週土曜日に更新予定です
撮影/ヤナガワゴーッ!(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxt、facebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
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