<純烈物語>純烈のリーダーから見た騒動の裏側<第1回>
‘18年大晦日に「紅白歌合戦」出場を果たし「紅白に出て、親孝行」という念願が成就。この世の春を謳歌していた、ムード歌謡グループ・純烈。しかしそのわずか9日後に発覚したメンバーの不祥事で事態は暗転、グループ存続の危機に立たされた。
純烈を結成、リーダーそしてプロデューサーとして苦労の日々を重ねてきた酒井一圭は、元々子役として芸能界にデビューし、戦隊ヒーロードラマなどで名を刻んだものの、その後鳴かず飛ばずとなった過去を持つ。後にプロレスと出会い、実際にリングに上がることで、その表現方法を純烈に昇華させている。その類まれな“人間力”はどこから生まれたものなのか。酒井本人やメンバーの現在と過去を行き来しながら、純烈の裏側を紐解くノンフィクション新連載―――酒井とともに「マッスル」に浸かってきたプロレスライター・鈴木健.txtが緻密な筆致で迫る。
“場外乱闘”がおりなすファンとの距離感
緊張と緩和による色気と触れ合える関係
日本列島が令和初の猛暑日となった5月25日、ゆりかもめのテレコムセンター駅から「東京お台場 大江戸温泉物語」まで4分ほど歩いただけで汗がにじんできた。入り口を通るとひんやりし爽快な気分となったが、すぐに息を潜めるようにして列を作る集団が目に入った。みな、受付の前でお行儀よくしている。
この日は14時と19時の二部構成で、館内大広間の中村座にて純烈の「温泉ライブinお台場」がおこなわれる。座席指定の前売券は完売していたが、立見は観覧無料とあり整理券を求めて朝から足を運んだ熱心なファンだった。その数50人ほど。
純烈にとってこの日の“大江戸決戦”は同所における10回目のライブ。そして、夢の紅白歌合戦出場を果たした9日後に当時メンバーだった友井雄亮の女性に対する不祥事が報じられ、天国から地獄へ落ちたあとに初めてファンの前へ立った場所でもあった。
あの日――それまで当たり前のように5人いた風景が、4人に変わった。ステージへ出た瞬間の物言わぬ空気の動きを、リーダーの酒井一圭(44歳)は生涯忘れられないという。いつもなら天国へあるお花畑のように笑顔が咲いている客席は、こみあげては抑えきれぬ涙で濡れていた。
目の前の情景だけではない。畳の大広間に並べられた背もたれつきのイスはいつもなら満席なのに、ポツポツと空いていた。この日は通販番組の収録イベントで、ファンクラブ抽選で当選した者のみが観覧できた。
足を運べばつらい現実を目の当たりにしなければなるまい。でも、せっかく当選したのにいかなかったら落選したほかのファンに悪い気がするし、何よりも純烈の力になれない。「だから、あの日の空席はつらさに耐えられなかったファンの人たちなんですよね」と、いつもはうひゃうひゃと話す酒井が唇を噛み締めながら下を見つめる。
5人から4人になった純烈を受け入れる覚悟で身を置きながら、友井のいない風景をいざ目にすると涙が止まらなかった。座るべき人がいない空席も泣いていた。でも、通販番組だから「ここで拍手してください」とスタッフに指示されたら盛り上げる必要がある。「こんなことを俺たちが言うのは本当におかしいんだけれど、笑ってリアクションをとってほしい」と願った酒井の前で、純烈を応援する人たちがそれぞれ自分と闘い、そして頑張っていた。
楽しんでもらうためのファンに対し、頑張らせてしまった俺ら……酒井は心の中で誓った。「この人たちのために、純烈は絶対にギブアップできない」――。
「昨日は長野にいて、しかも家まで取りにいかなきゃいけないものがあったからいったん自宅に戻って朝ここへ到着したんです。今日も出たり入ったりで……詰め込みすぎだろってなるんですけど、時間的にやりくりできるなら入れてくれって事務所にも言ってあるから」
前日、公式ブログを通じライブ終了後におこなわれる対象CD&DVD購入者特典撮影会に関し、酒井が不参加になることが告知された。リンクを張ったツィッターには続々とリプライがつき「お仕事の関係であればよいのですが……体調不良ではないかと心配です」といった声が並んだ。

白と黒とハッピー~純烈物語【第1回】
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxt、facebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
記事一覧へ
![]() | 『純烈物語 20-21』 「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。 ![]() ![]() |
![]() | 『白と黒とハッピー~純烈物語』 なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。 ![]() ![]() |
記事一覧へ
【関連キーワードから記事を探す】
松本人志は再起なるか?「復帰できる/できない」芸能人の“ブランディング力”の違いとは
「文春砲をネットでリライトして200万儲けた」スクープおこぼれ商法の手口
松本人志報道で、文春はいくら儲かった?スキャンダル報道は苦労に見合うか
松本人志、伊東純也スキャンダルの裏で何が…?現役週刊誌記者が明かす「性加害報道」のウラ事情
【完全版】松本人志、伊東純也スキャンダルの裏で何が…?現役週刊誌記者が明かす「性加害報道」のウラ事情
純烈、デビュー15年で初の武道館へ。「俺は3年前に勝手に決めてた」酒井一圭が語る想い
<純烈物語>2年3か月追い続け、紡いだアルバムとは違うクロニクル<最終回>
<純烈物語>純烈にとって特別な場所が消えていくと、そこには巡り合わせがあることに気づく<第119回>
<純烈物語>売れない芸人たちも働いていた……大江戸温泉物語の「働く人」の力<第118回>
<純烈物語>最後の大江戸温泉ライブに来られなかった最前列のファンへ思いを届けて<第117回>
元子役・読者モデルの今。芸能界の厳しさも痛感、“歯科医師”としての新たな挑戦「20歳の女性が口を開けたら、歯がほとんどなくて」
タレントを売り飛ばす芸能界の“上納”の実態。誰もが知る大手芸能事務所も…
「昔は自己顕示欲がすごくあった」釈由美子45歳が“子育て経験”からたどりついた境地
「なんでMCなんてやってるんだろう」芸能活動42年の中山秀征(56歳)が“悩んだ過去”を告白
中山秀征(56歳)“生ぬるい”と評されて30年「何も考えず遊んでいるだけに見えるなら、ある意味本望」
この記者は、他にもこんな記事を書いています