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なぜ使えない50代が増えるのか? 若い頃は有能だったのに…

楽しみ続けることが活躍できる秘訣

北野:あと、常々思っているのですが、人生って、何かを面白がる力がめちゃくちゃ重要だと思います。以前、東京大学で物理学を研究されていた早野龍五先生も、「楽しそうにしている人には、人やチャンスが寄ってくる。それがすべてだ」とおっしゃっていました。 伊藤:誰に対してもフラットな気持ちで、全力で楽しめることは、50代にとっては重要ですよ。その上で必須なのは、「プライドを捨てる」ということ。例えば、若い人と話をして「この若造が何を言ってるんだ」と上から目線で対応するのか、「それ、本当ですか!」と前のめりで話を聞くのか。それが分かれ目です。 使えない50代北野:人生100年時代と言われるなか、「聞く、話す、読む、書く」のなかで、明らかに聞く力が一番大切だと思います。それも、ただ聞くのではなく、楽しみながら能動的に聞く。変化が激しくて、明らかに自分より知見がある人がたくさんいる世の中で、他人の意見を前向きに吸収しないのは、非常にもったいないことですよね。 伊藤:そうそう。仮に本気で「すごい」と思っていなくても、意識的に「すごい!」「面白い!」と言うだけでも十分です。  自分が盛り上げることで、周りも楽しくなってくれるし、後から気持ちがついてきて、自分自身も楽しくなっていく。正直なところ、僕自身も「今、この瞬間を楽しんでいるように見えるように、こういうリアクションを取ろう」と、ひそかに練習しましたからね(笑)。 北野:お笑い芸人の方も、その傾向が顕著ですよね。 伊藤:『さんまのまんま』とか見ていると、明石家さんまさんがひたすら聞き手に回って、大笑いしていますから。  基本的に、他人の言うことを素直に聞けない50代って、年を重ねて好奇心が欠如しているのだと思います。僕も、昔は新しい情報に接するのが嫌で、初めての人が多い飲み会とかは行かないようにしていたんです。でも、次第に「あれ、俺、好奇心を持たないとヤバイな」と気がついて改善しました。 北野:好奇心って、自分で意識して持てるようなものなんですか? 伊藤:行動すれば持てるようになりますよ。何でもいいから行動すると、好奇心が刺激されて、次の興味の対象が見つかりますから。例えば、今年の12月にU2のライブがあるんです。僕の世代の人間にとっては青春のバンドですが、「まぁ、CDでも聴けるしな」とライブに行かずに終わっちゃうか、チケットを取って「絶対行くぞ!」とアクションを取れるかどうか。いざ行くと好奇心が刺激されて、「よし、じゃあ次はスティングのライブに行くか」って、次の行動に繫がるんです。 北野:なるほど、きっかけは何でもいいんですね(笑)。最近は「50代が危ない」という悲観的なニュースが多いですが、一方でポジティブなニュースも増えてます。例えば、老舗医薬品メーカーの森下仁丹では「第四新卒」として中高年の幹部候補を募集しているし、パソナでは60歳以上の「エルダーシャイン制度」を実施したり、シニア正社員の入社式もやっています。  その入社式に行った人に話を聞いたら、みんな「仕事があってうれしい!」と目をキラキラさせて喜んでいたとか。明確な役割と居場所があれば、人は何歳でも輝けるんだなと思いました。 伊藤:50代でも60代でも、プライドを捨てて、好奇心を持って行動すれば、いくらでも輝くことができるんですよ。思考停止状態が一番よくない。 北野:「この会社にいる限り、楽しめない」と思うような負の連鎖があるなら、それは一度断ち切ることが大切ですよね。たとえ、それで収入を犠牲にすることになっても。 伊藤:変わりたいなら、最初は収入を捨てて、モチベーションを取るべきだと僕は思います。子供の教育費や住宅ローンで目の前の収入を取ってしまう気持ちもわかりますが、それこそ棒立ちで殴られ続けるようなもの。一度かがんでモチベーションを上げれば、仕事のパフォーマンスが上がって収入はあとからついてくる。すると、さらにモチベーションがアップして収入が上がって……というプラスのスパイラルが生まれます。 北野:繰り返しになりますが、やりたいことをやってイキイキしている人に、仕事や人が集まりますからね。まずはそこから、始めてほしいです。 【伊藤羊一】 ’67年生まれ。Yahoo!アカデミア学長、ウェイウェイ代表取締役、グロービス経営大学院教員。8月22日に新刊『0 秒で動け』(SBクリエイティブ)が発売 【北野唯我】 ’87年生まれ。ワンキャリア執行役員、レントヘッド代表取締役。著書に『転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞社出版) <取材・文/週刊SPA!編集部>
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