「何に向いているのかわからない病」への処方箋
中島:自分をコンテンツにするのは流行ってるし、楽そうに見える。何もせずに収益が生まれてるようにも見えるし、みんなやるんですけど、自分をコンテンツにするっていう競技は、バスケみたいな感じなんですよ。サッカーだったら、背が低くても終わりではない。でも、バスケは身長200cmのやつと、150cmのやつでは戦えない。身長があるやつは、楽できる。200cmの人だったら、ポイってやったら入る。
高瀬:じゃあ、そもそも今自分がバスケをやらされてるかどうかに気づくことが大事と。
中島:そうですね。僕の世代でも、自分でブログを書いたりYouTubeをやってみたけど、割に合わない、ってやめてく人は多いんですよ。それは正しくて。その人は周りの人を支えたり、他の人のコンテンツをサポートしてあげるとか、そういうほうが合ってたり、経験値が溜まるかもしれない。
僕のマネージャーがいい例です。今、東大生でやりたいっていうからやらせてるんですけど、僕のマネージャーってことでライティングの仕事が来たりする。チャンスが増える。この競技は、向いてないと遠すぎるんですよ、ゴールが。たまたま背が高くてバスケに向いてるやつに乗っかって、ゴールを決めていったほうがお得だよねって。それに気づくと、結構シュートが上手くなって、他の競技にも役立つ。
高瀬:あえて大衆的な質問をすると、自分が何に向いてるのかわからない、みたいな話になりやすいじゃないですか?
中島:はい。そもそも。
高瀬:バスケとサッカー、どっちが向いてるかわからないという。その質問に対する答えはないんだけど、もし聞かれたらなんて答えます?
中島:自分のことをわかるのって、結構、難易度高いですよね。それより市場を知ることが大事だという風に僕は思ってます。
高瀬:確かに!変わるしね。
みんな自分でやろうとし過ぎてるかもしれない(高瀬氏)
中島:編集者の箕輪さんの話で面白かったのが、「音楽やってみて思ったけど、俺やっぱ編集得意だわ」っていうやつ(笑)。新しいことをして、今まで得意だと思っていたことがさらに得意だと思うか、これも得意かもって思うかは、プレーする中でわかっていくものだから。とりあえず何が得意かはおいといて、色んな市場・職業で、何が必要なのかをちゃんと理解する。
例えば、DJ社長みたいに若い人に人気のYouTuberをなんで売れてるんだろうって考えると、市場が見えてくる。それを自分でもできるかは、やってみないとわからない。
高瀬:今、すごいロジカルに説明してくれましたけど、それを言語的に理解できる人ってあんまりいないですよね。たぶん「とりあえず、やってみなはれ」だったり、「好きなこと見つけなさい」って意訳されちゃうんだろうけど。
中島:そうですね。ほとんどの人は後ろ盾がないと動けない。自分がいる環境における失敗みたいなものに勝手にビビって「やっぱ、やめた」って。会社をやめてブロガーになりましたとか、仮にそれでうまくいかなくても、日本って、そもそも死なないですからね。最強のセーフティネットがあるのに。アルバイトしてても死なないし。別に0か1かじゃなくても、会社で働きながら時間を作って何かやって、「いけるかも」って思った段階で移動すればいいんですけどね。
高瀬:僕もそう思いますね。
中島:それがいつになるかは、人によると思うんです。収益が月1万円でいける気がするのか、今と同じだけないと安心できないのか。ただ、市場で求められてるものは変わっていくので、そこを理解するのは大変ですね。コンテンツをつくる能力と、流れを読む能力は全く別なので。
僕はどっちかというと、流れを見るほうが強い。それも変な話、僕みたいな人間に会えるわけじゃないですか。会って教えてもらえばいい。そう考えたら、自分ができなくても、そういう人に協力してもらえればいい。
高瀬:確かに。みんな自分でやろうとし過ぎてるかもしれないね。もっと人の力を借りれば、っていうのはあるかも。僕もそうですけど、ほとんどボタン押してるもん。「これ、やりてえな」と思った時に、このボタンを押しとくと、あの人が動いてくれるなとか。ずるいんだけど。確かに今の話を聞いて思ったんですけど、もっと他人に任せればなんでもできるよ、っていうのはあるかもしれない。
中島:任せるのも難しいんですけどね。前提条件として、周りに人がいますかという話はあって。
高瀬:それは、そうですね。
中島:僕がなぜ前に出てやっていこうかと思ったかと言うと、人に助けてもらわないと生きていけない、それが重度だったから。このままだと死ぬなと思って。色んな人に助けてもらうしかない。じゃあ、僕が提供できるものは何か、と突き詰めていった結果こうなった。
高瀬:そこまで考えられることがすごいんだけどね。
~第3回へ続く~
高瀬敦也
株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。フジテレビのプロデューサーを経て独立。音声と写真のコンテンツプラットフォームアプリhearrの企画やマンガ原作・脚本制作、アイドルグループ、アパレルブランドのプロデュースを手掛けるなど、幅広いコンテンツプロデュース・コンサルティングを行っている。著書に『
人がうごく コンテンツのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)
中島太一
プロ奢ラレヤー。22歳。年収1000万円の奢られ屋。Twitterを介して出会った様々な人に「奢られる」という活動をし、わずか6か月でフォロワー2万人を獲得。現在、フォロワー6万人超。
<取材・文/高橋孝介 撮影/Coji Kanazawa 取材協力/AOYUZU恵比寿>