バイアグラだけじゃない「ED治療」。塗り薬や衝撃波による治療も…
中高年者はおろか、20~30代にも増加中のED患者。原因は高血圧症、糖尿病などメタボリック症候群の合併症が顕著に。対処法もバイアグラなどの服薬のみならず、多岐にわたり始めている。
国内だけで1000万人以上いると言われているED患者。そんな悩める男たちにとって、手軽な経口薬であるバイアグラ(成分名シルデナフィル)は、まさに救世主だった。バイアグラは、’98年にアメリカでデビューすると世界的なセンセーションを巻き起こし、日本でも異例の早さで翌年には販売が開始、今や1錠1500円程度で買えるように。ED治療の大家で、自身の服薬歴も長い川崎医科大学の永井敦教授も称賛を惜しまない。
「バイアグラ以前、ED治療には有効な内服薬はありませんでした。ペニスの血管を広げ、血流を促すことで勃起の反応を高めるPDE5阻害薬であるバイアグラは、飲むだけで7~8割の患者に有効だったため、ED治療の革命と言われました。現在の日本でもバイアグラをはじめ、レビトラ(バルデナフィル塩酸塩)、シアリス(タダラフィル)など類似の作用を持つ内服薬が依然として主流です」
そんな「バイアグラ時代」が、近々ひとつの区切りを迎える。ある医療ジャーナリストはこう言う。
「四半世紀にわたって世界中の男たちの相棒を担ってきたバイアグラですが、日本に遅れること6年、本家アメリカでも’20年に特許切れを迎えます。それに伴なって、ようやくアメリカでバイアグラのジェネリック医薬品が販売できるようになるため、多くの製薬会社が色めき立っています」
バイアグラをきっかけに、男たちは“EDは恥ではなく治療の対象”と意識を変えた。この偉大な薬に敬意を表しつつ、ED治療の最前線を追っていこう。
たしかに「ED治療=バイアグラ」の固定観念は強い。しかし、永井教授が言うように、すべてのED患者に効くわけではない。
「がん治療で前立腺を全摘した人や、勃起神経を温存できなかった人も含め、バイアグラが効かないケースでは、プロスタグランジンE1陰茎海綿体注射という処置法があります。その名の通り、血管を広げる薬をペニスへ直接注射し、勃起を促進します。細い針なのでそれほど痛みは感じず、血管が正常であれば20分ほどで効果が表れます。そのため、打ってすぐにパートナーの待つホテルに走るなんて人もおり、我々はこれを『ホテル直行法』と呼んでいます」
この注射は海外ではキットが発売されているほどポピュラーであり、日本でも早期の保険適用が望まれている。
また、イギリスの製薬会社であるフューチュラメディカル社が開発した「eroxon(エロクソン)」は、今までになかった“塗る”ED治療薬だ。エロクソンは効果が表れるまで5分、さらに注射のような痛みもなく、即効性と手軽さを持ち合わせた新薬だとして、注目されている。
エロクソンは、血管を拡張させる「ニトログリセリン」が含まれたクリームを直接ペニスに塗り、表皮から吸収させることで血流を改善し、勃起を促すというもの。永井氏も「ニトログリセリンは心臓の血管を広げる成分ですので、理論上効果は見込める」と話す。
ペニス表面へ直接塗ると聞けば、それと濃密に接触するパートナーへの影響が当然心配されるところだが、同社の公表データによれば、どうやら杞憂のようだ。
「塗って5分後にはすべての成分がペニスに浸透し、1003例の試験でパートナーに軽度の副作用があったのはわずかに4例です。バイアグラは心臓などへの副作用の懸念から服用禁止の人もいますが、エロクソンは局部のみに働くため、そうした副作用の心配も少ないのです」(医療ジャーナリスト)
エロクソンは現在、イギリスで最終治験に入っており、今年末までに完了する見通しだ。“魔法の塗り薬”の日本上陸が待望される。
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