更新日:2023年04月25日 00:15
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目黒虐待死/母親はなぜ父親に従ったのか? 暴力を受け続けた女性が体験した心理

夫婦が支配/被支配の関係になるケースは少なくない

「目黒女児虐待事件」では、優里被告が「心理的支配下」に置かれていたことが明らかになり、刑の重さを決めるにあたって「なぜ虐待を制止できなかったか」が争点のひとつになっています。低栄養と免疫力低下が引き起こした肺炎によって、敗血症で亡くなった結愛ちゃんの体に残された170もの傷は、彼女が受けた虐待の凄惨さを物語っていました。今、こうしてパソコンに向かっている間にも、私は悲しみや被告人への怒りを覚えていますし、彼らの行為が到底許されることではないと強く感じています。  しかし、今回の事件において、私たちが優里被告と雄大被告を単なる「特異な存在」だと扱い、社会から排除して終わりにしてしまうことは、果たして今後起こりうる虐待の防止に繋がるでしょうか。恐らく、虐待が行われている家庭において、もしくは虐待やDVがまだ行われていないとしても、夫婦間で「支配者」と「被支配者」の関係性が構築されているケースは、かなりの数存在するでしょう。  それであれば、虐待死する子どもをこれ以上出さないためにも、今回のようなケースを「別世界の話」や「他人事」だとは思わず、家庭で起こる暴力が発見されづらい理由を少しでも知ることで、ひとりひとりが小さなSOSに気付くことができる社会を作る必要があるのではないでしょうか。 <文/吉川ばんび>
1991年生まれ。フリーライター・コラムニスト。貧困や機能不全家族、ブラック企業、社会問題などについて、自らの体験をもとに取材・執筆。文春オンライン、東洋経済オンラインなどで連載中。著書に『年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声』 twitter:@bambi_yoshikawa

年収100万円で生きる-格差都市・東京の肉声-

この問題を「自己責任論」で片づけてもいいのか――!?
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