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なぜ人はSNSで正義を振りかざすのか。鴻上尚史氏に聞く

 運転士が乗務中に水を飲めば「仕事中なのに」と言い立て、警察官や消防士が日中にコンビニに寄れば「公務員が!」と憤り、コンビニ店員同士が談笑していたら「職務怠慢だ」と鬼の首をとったように主張する。 正義マン 狭量なのか、暇なのか。何にイライラしているのか。その理由はわからないが、些細なことに「正しさ」を主張する人の声が、なんだか最近、喧(かまびす)しい。

「正義を振りかざす人」は何がしたいのか

 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」で、世間の息苦しさを指摘してきた劇作家の鴻上尚史さんも、「クレームの時代と言われるけれど、ここまできたかと思うよね」と語る。 「SPA!の連載でも書いたけれど、苦情・クレームと言っても、真っ当なクレームがあれば、金品の要求が目的の場合もある。そしてもうひとつが、『俺の話を聞け』『俺をないがしろにするな』という思いがクレームになっているケース。このタイプが増えているような気がして、極めて現代的だと思う」  その背景には「みんながスマホを手にし、SNSを通じて自己主張ができるようになったのが大きいのでは」と鴻上さん。  SNSをはじめれば、自然と「いいね」やフォロワーの数を意識せざるを得ない。「1000RTなんてされると、そのときの感覚は麻薬に近い」もの。  しかし、自身のなんでもない日常をつぶやいても、誰も相手はしてくれない。映画やアニメのうんちくを語っても、論破されるだけ。でも、正しさは誰も真正面から否定できない。こうして、正義が振りかざされるというわけだ。 「ツイッターで『今日もストリートライブを行う違法者がいました』って、つぶやいている人がいるんだけど、おそらく『ストリートライブくらい、別にいいじゃないですか』なんてリプライを、手ぐすね引いて待っているんだと思う。どんな反論がきても、『あなたは法律に無視して生きているんですか』と、100%言い返すことができるから。  絶対的に揺るがないものに乗っかって自己主張をするのって、やっぱり自己肯定感なんだと思う。自分の存在理由や存在価値を確認したいんだろうね」  何者でもない自分が、何者かであるかのように思わせてくれるのが“正義”のふるまい。かくして、「ソーシャル・ジャスティス・ウォーリアー(Social justice warrio:社会正義戦士)」が生まれるというわけだ。
鴻上尚史氏

鴻上尚史氏


炎上してもツイッターをやめない理由

「今、ファンタジーなSFドラマがあまり流行らないのは、『こんなこと有り得ない!』といったクレームがくるから。こうした苦情を言う人のことを“物理警察”って呼ぶらしくて。英語では“戦士”なんだけど、日本では“警察”って言うのはおもしろいよね。  まぁ、戦士でも警察でも、苦情を言う人もめぐりめぐって、自分で自分の首を絞めているわけで。いったい、どこに行くんだろうって思いますわな」  SNSによって民の声は可視化された。それ自体は悪いことではないが、いまだ、新しいこのメディアに慣れていないということか。  鴻上さんも“警察”に絡まれて炎上することもしばしば。ときに凹むこともあるそうだが、それでも、ツイッターはやめられないという。 「なんやかんや言っても、情報をつなぐ、人間をつなぐメディアとして、ツイッターのよさを信じているんだよね。1万人に背後から撃たれたとしても、10人位から『おぉ!』と思わせてくれる言葉が届く。それを手放すのは、やっぱり惜しい。  “正義”でもなんでも、当たり前に対する違和感を伝えていくのも、僕がいろんな形で表現をやっている理由でもある。まだまだ犬や猫の動画しか見ないってほどには、うちひしがれてはいないぞ、っていうプライドはあるわけで(笑)」

住民クレームに悩まされる“正義の味方”

 そう語る鴻上さんの新作舞台『地球防衛軍 苦情処理係』(東京:11月2日~24日、大阪:11月29日~12月1日)は、まさに“正義”を問う物語だ。 地球防衛軍苦情処理係 住民の暮らしを守るため、怪獣や異星人と戦う地球防衛軍やハイパーマンは正義の味方。しかし、彼らは殺到するクレームの数々に思い悩まされる。 「怪獣に踏みつぶされたんなら、納得するよ。でも、俺の家は、地球防衛軍のミサイルで壊されたんだぞ。それはおかしいだろ!」 「怪獣の被害に火災保険がおりないってのはどういうことだ!」etc.  怪獣に仮託したのは、地震や津波などの人間の力の及ばないもの。そこに、ルールや人の思いがからみ、“正義”は揺らぐ。  舞台のフライヤーには「これは絶望と希望の物語です」という鴻上さんの言葉がある。息苦しさに押しつぶされそうなこの国に、どんな希望を見出せるのか? その答えは劇場で――。 【関連記事】⇒鴻上尚史、秋の新作舞台は住民の苦情に悩む地球防衛軍のお話 <取材・文/鈴木靖子>
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

『週刊SPA!』(扶桑社)好評連載コラムの待望の単行本化 第19弾!2018年1月2・9日合併号〜2020年5月26日号まで、全96本。
KOKAMI@network vol.17『地球防衛軍 苦情処理係』
〈東京公演〉11月2日(土)〜11月24日(日)
紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
〈大阪公演〉11月29日(金)~12月1日(日)
サンケイホールブリーゼ
出演者/中山優馬、原嘉孝(宇宙 Six/ジャニーズ Jr.)、駒井蓮、矢柴俊博、大高洋夫ほか
http://www.thirdstage.com/knet/CBKS/
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