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漫画家・吾妻ひでおさんが死去。失踪どん底生活を、江口寿史さんと語った日

 漫画家・吾妻ひでおが10月13日未明、東京都内の病院で死去した。享年69歳。食道がんで闘病していたという。  ’69年「まんが王」でデビューし、以降次々に不条理ギャグ、SF、美少女漫画の元祖として活躍。その後、ホームレス生活、アルコール依存症による入院で執筆活動を中断。しかし、休業時のどん底生活を赤裸々かつ軽妙に綴った「失踪日記」で復活を遂げるなど、漫画界に多大な影響を与えた。
江口寿史×吾妻ひでお

お互いの作品への思い、印象に残っている作品を語りあう江口寿史(左)と吾妻ひでお(右)

 今回特別に2015年6月13日に行なわれた漫画家・江口寿史とのトークショーのリポートを再掲載する。  お互いの作品への思い、日記漫画を描く楽しさ、苦しみ、ギャグ漫画への思い、そして酒……縦横無尽に語り尽くした。 ※このトークショーは、江口寿史の日記エッセイ『江口寿史の正直日記』の文庫化発売記念として行なわれたものです

ギャグ漫画家は5年でつぶれる!?

江口:吾妻さんと初めてお会いしたのは81年。いしかわ(じゅん)さんが開いた事務所のこけら落としのパーティでしたね。ひとことごあいさつしただけなんですが、吾妻さんもいらっしゃるらしいと聞いて、それはもう行かねばと。当時連載中だった『ストップ!! ひばりくん!』の原稿をほっぽりだして行ったのを覚えています。もう30年以上前の話ですが、こうして公の場でお話しさせていただくのは、実は初めてなんですよね。 吾妻:あのときは誰も僕に話しかけてくれなくて……悲しくてすぐ帰りました。家に帰ったら奥さんに「あなたが話しかけるなっていうオーラを出しているからだ」って言われたんですけど。 江口:漫画家はみんなシャイですから(笑)。ギャグ漫画家同士シラフで集まっても、何も話さずに終わるんじゃないかな。僕が酒を飲む理由もそこにあるというか、シラフだと見ての通り好青年なもので(笑)、酒を飲むと自分が漫画のなかで描いている「先ちゃん」のキャラクターになれるのがラクなんですよ。吾妻さんは何で酒を飲むようになったんですか? 「この徹は踏むまい!」(吾妻氏の『失踪日記』『アル中病棟』では自身のアルコール依存症のエピソードが克明に綴られている)と思って、今日はそのあたりをぜひくわしく伺いたくて(笑)。 吾妻:やはり仕事のストレス……あとは江口さんと同じでシラフだと人と会話できないんです。 江口:アル中の人って飲んでても飲んでなくても楽しくなさそうじゃないですか。『失踪日記』を読むと、吾妻さんは朝から飲んだりされてましたけど、それで仕事はできたんですか? 吾妻:朝から飲むと……それはできないですよね。そのときは仕事をしていない時期でした。 江口:吾妻さんは「タバコを買いにいってくる」と言って失踪されましたが、僕は「ちょっとゴミ袋買ってくる」って言って2~3日消えたことがあります。そもそも原稿が落ちそうな状態で、片付けなんてしてる場合じゃないのにどうしても片付けたくなっちゃって。そしたら「あ、ゴミ袋がない!」って。むちゃくちゃですよね。
江口寿史×吾妻ひでお

ギャグ漫画への思いを語る吾妻ひでお

吾妻:手塚るみ子さん(プランニングプロデューサー。手塚治虫の長女)は「秋本治さん(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』)みたいなシチュエーションコメディは長続きできるけど、ナンセンスギャグの漫画家は5年でツブれる」とおっしゃっていました。
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ギャグを思いつけない苦しみ
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