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働き方からファッションまで。世界一周をする男たちが見た日本<乙武洋匡×東松寛文対談 第3回>

閉店時間は絶対に死守する

乙武:「それで一時帰国したときに、ネットでバズってた記事がまさに『週刊SPA!』のものだったんですけど、『ウルトラライトダウンおじさんキモい』みたいな記事があって(笑)。それがまさに日本だよなと。  要するに、人が何かを着ているだけで、まったく関係ない第三者が不快になったり、イチャモンつけたりするのが日本なんだなって。僕も日本にいたらそう思ったかもしれないけど、海外から帰ってきてその記事をみて、『どうでもいいな~』って思ったんです」 東松:「スーツとかもそうですよね」 乙武:「あとは、まさに日本で叫ばれている働き方改革ですよね。ロンドンでは17時で閉店の薬局があって、そもそも17時閉店もびっくりだけど、たまたま入ったのが16時57分だった。日本だとお客さんが帰るまで閉めないじゃないですか? でもそこでは入った瞬間に店員が飛んできて『あと3分後に閉店するけどいいか?』と。  そうは言っても追い出されはしないだろうと思って商品を物色していたら、また飛んできて『あと1分で閉めるから』と言われて、これちょっと本気モードだなと。急いで会計したら、会計している最中に『もう17時すぎてるのに……』とブツクサ言われて、追い出されるように出て行った」 東松:「海外だとありますよね」 乙武:「日本の客商売だとありえないじゃないですか。でもこれぐらいシビアにやらないとプライベートは守れないし、仕事はそもそもプライベートを充実させるためにやっているものであるという価値観の順位づけがはっきりしている。  だからこそ、海外の人は『過労死ってなに?』と思う。『仕事のために生きることが奪われるってどういうこと?』って理解できない」

休み方が働き方を変える

東松:「僕も今ハッと思ったのが、そこまで努力して休んでいる人っていないんですよね。みんな周りの目が気になるわりには、欧米がいいなって言ったりして。向こうはそこまでちゃんとマインドセットしてあって、絶対に休むっていう思いでなりふり構わずやる」 乙武:「以前、小学校で教員をやっていたんですよ。僕は当時から休みをやりくりして国内旅行に行っていた。授業を休むことはなかったけど、通常の勤務が17時までなら1時間だけ休暇を取って16時に学校を出れる。そうすると19時ぐらいには仙台に着けるんです。  ところが、そういう休み方をしていたら、『ほかの教員の方々の手前もあるので』と言われたんです。意味がわからなくて。だったらみんなもやればいいじゃんと。僕だけが逸脱していて、特別なルールのなかでやっているならそう言われるのも理解できるんですけど、与えられた権利を行使して何がダメなんだと」 東松:「働き方改革が本末転倒になっているのは、働かせ方改革になっているところですよね。企業にとってうまく働いてもらうための改革。今の働き方改革は解決になっていないのは、みんな自分で決定してこなかったからですよ。なんとなくの社会のレールに乗って生きてきたからだと思う。  僕は休みに自分の軸を見つけられて、それがたまたま旅行だった。旅行に行くって決めたら、じゃあどうやって休もうかと。週末使ってダラダラやっていた仕事を金曜の夜までに終わらせなきゃいけない。そう思うと、決められた仕事だけど結果的に自分で締め切りを決めなおして、休み方を変えたら働き方も変わった。どんどん主体性が持てるようになった。休みは自分を変えるチャンスなんです」 <取材・文/日刊SPA!編集部 撮影/荒熊流星> 【乙武洋匡】 ‘76年、東京都生まれ。大学在学中に出版した『五体不満足』がベストセラーに。卒業後はスポーツライターや、小学校教諭としても幅広く活躍。『ただいま、日本 世界一周、放浪の旅へ。37か国を回って見えたこと』が発売中 【東松寛文】 ‘87年、岐阜県生まれ。平日は広告代理店に勤務、週末は世界を旅する「リーマントラベラー」。主な著書に『サラリーマン2.0 週末だけで世界一周』『人生の中心が仕事から自分に変わる! 休み方改革』など
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ただいま、日本

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人生の中心が仕事から自分に変わる! 休み方改革

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